パストラル/渡辺貞夫

   

エキゾチックなテイスト

中近東風エキゾチックな《FANDANGO》は、渡辺貞夫の『パストラル』の中でも群を抜くナンバーだ。

スパニッシュ的な旋律、そしてリズムなのに、中近東風なフレバーに聴こえるのは、冒頭の渡辺貞夫によるソロがまるで蛇使いの笛のように聴こえるからかもしれない。

ソプラニーノサックス

この演奏のハイライトのひとつは、痙攣チックに同一単音を「テロレロレロレロレロレロ……」と繰り返す増尾好明のギターだ。

これがなければ、私はそれほどこの曲に注目しなかったかもしれない。

鈴木義雄のベースも重量感満点。
重く粘り、さらに知的。

ワイルドで広がりのある渡辺文男のドラムも砂漠の嵐。

メンバーは全員日本人。

だからというわけでもないが、端正にキチッとまとまった演奏。

だからといってコジンマリと纏り過ぎているというわけでもなく、四畳半以上の広がりとスケールはお約束しますですよ。

いや、むしろ目の前に広がる田園風景、パストラル。

しかし、1曲目のタイトル曲はど~も苦手。
ソプラニーノサックスの高音がアタマにキンキンする。

増尾好秋のギターは、ギュインギュインとよく歌っているけどね。

この曲の曲想に合う音色は、個人的にはソプラノサックスの音域だと思っている。

ただ、ソプラノはキーが「B♭」なので、同じキーのテナーサックス奏者が持ち換えることの多い楽器なんだよね(ウェイン・ショーターやブランフォード・マルサリスとか)。

アルトサックスの場合は、キーが「E♭」なので、低音のバリトンサックスに持ち替える奏者は多いのだけれども、同じ「E♭」の高音を担うソプラニーノに持ち替えるサックス奏者はあまりいないので、珍しいといえば珍しい。

ソプラニーノサックスの音色ってどんな音?という好奇心を持つ人にとっては、「こういう音ですよ」と分かりやすく提示しやすい曲ではあります。

記:2001/08/22

album data

PASTORAL (CBS SONY)
- 渡辺貞夫

1.パストラル
2.ブリッジ
3.東京組曲
4.ゲイリー、オトロ・サンバ
5.ある日郊外で
6.ファンダンゴ
7.きんきらきんのクロージング・テーマ
8.リトモ・サボローソ

渡辺貞夫 (as,sopranino sax,fl)
田中正大,松原千代繁 (f-horn)
増尾好秋 (g)
松本浩 (vib)
八城一夫 (el-p)
鈴木良雄 (b)
渡辺文男 (ds,per)

1969/06/07

 - ジャズ