エリントンは爆発なのだ!
林建紀氏によるエリントン特集
先日、四谷「いーぐる」で行われた林建紀氏による「いーぐる連続講演・エリントンを聴け!その1~凄腕ピアニストの全貌~」に参加してきた。
デューク・エリントンのピアノにスポットを当てた特集で、エリントンのキャリアの初期のスタイル、バッキングスタイルの変遷、誰からどう影響を受けたのか。また、ビリー・ストレイホーン(p)との邂逅による微妙な作風の変化などが音を交えて解説されたので、非常に分かりやすく、かつ興味深い内容だった。
私が特に面白いと感じたのは、後半の50年代にはいってからの音源だった。
ますます精力的になってきた作曲活動と、ピアノ表現。
お約束の『マネー・ジャングル』の大音量もそれはそれで圧巻ではあったが、なにより面白かったのは、1961年の『ピアノ・イン・ザ・フォーグラウンド』の《サマータイム》だった。
ピアノがドッカーン!
特注で4鍵多く造ったピアノ(通常は88鍵だから、92鍵となりますね)を、ぶち壊すかのような、ラストの「ドッカーン!」は恐いのなんの。
超ド迫力の音塊と、ただごとではない殺気。
ミンガスもマイルスも「おっかねぇ人」ではありますが(笑)、彼らを畏怖せしめるだけの貫禄とセンス、演奏者としての力量に納得。
この特集が終わった後に、モンクの『5・バイ・モンク・バイ5』が店内で流れたが、正直、エリントンのドッカーン!なピアノの余韻が残っている耳には、アクの強いはずのモンクのピアノも、「ピアノのいたずらっ子」が楽しくピアノを弾いているぐらいの印象しか感じなかったからね。
(もっとも、『5・バイ~』は、モンクの中でも軽やかな内容のアルバムではありますが)
美しく静謐な世界
さらに、私が印象深かった音源をもう一つあげると、『ピアノ・リフレクションズ』収録の《メランコリア》。
ドッカーン!な《サマータイム》とは対極な、モロ印象派なテイストを帯びた、美しく静謐な世界。
《メランコリア》と《サマータイム》が連続してかかっただけに、エリントンというピアニストの両極端な側面を味わえて興味深かった。
両極端というよりは、表現のレンジが広い、というべきか。
表現の過激さ、エグさでいえば、そんじょそこらの生半可なフリージャズが束になっても勝てない、強靭なエリントンの骨太世界を味わえた2時間半だった。
エリントンに還れ
最近のジャズってなんだかツマらなくて……、
エグいの聴きたいんだけど、コルトレーンやアイラーとは違った、未知なるスリルと刺激が欲しくて……
とお悩みの方がいらっしゃれば、
エリントンに還ってみましょう。
ビッグバンドはちょっと……、という方もいるかもしれないが、ピアニストとしてのエリントンを聴いてみては如何?
まずは、『マネー・ジャングル』。
そして『ピアノ・リフレクションズ』に歩みを進めてみましょう。
《サマータイム》聴けば、夏バテ(残暑バテ?)どころじゃなくなりまっせ。
記:2007/08/29