パウエルにサティの影響あり?
ルーツはクラシック
バド・パウエルは、15歳でジャズに目覚めるまでは、クラシックの勉強をしていたというのは有名な話。
ベートーベン、リスト、ドビュッシーなどを弾いていたという。
あと、バッハね。
彼のバッハは、ブルーノートの3枚目『バド!』に収録されている《バド・オン・バッハ》でパウエル流「ジャズバッハ」が聴ける。
私の手許の資料を読むかぎりにおいては、彼はサティを弾いていたという記述はないのが、これはあくまで私の推測だが、パウエルは、サティも弾いていたのではないかと思う。
パウエルが勉強していたドビュッシーの作曲技法に大きな影響を与えたという、エリック・サティ。
「家具の音楽」と呼ばれ、少ない音が機能的に作用しあい、スタティックな佇まいを見せるサティの曲。
《3つのジムノペディ》の1番は特に有名。
そして、《ジムノペディ》に負けずとも劣らない名曲の1つに《3つのサラバンド》がある。
この1番を聴くたびに、私はパウエルの自作曲《ダスク・イン・サンディ》を思い出す。
『ジニアス・オブ・バド・パウエル』に収録されている名曲だ。
曲の和声や、とりとめもなく移り変わるような和音で主旋律が形成されている点は、《サラバンド》にそっくり。
だと思いません?
もしかしたら、パウエルはこの曲を下敷きに《ダスク・イン・サンディ》を作ったのかもしれない。
もっとも推測の域は出ないが……。
もっとも、双方、曲の「かたち」は似ているが、
佇まいはまるで違う。
パウエルが演奏するサティ風の曲は、勇壮かつロマンティックな要素も多分にある。
ロマン派の要素が混じった印象派って感じ?
とにもかくにも、『ジニアス・オブ・バド・パウエル』は、超高速テンポで演奏されるピアノトリオの演奏はさておいて、中盤から後半にかけてのソロピアノをもっともっと聴いてみよう。
彼が本質的に持つ「甘さを排したロマンティシズム」に満ち満ちている。
記:2007/12/10