サンズ/スティーヴ・レイシー

      2021/02/27

孤高のソプラノサックス奏者、スティーヴ・レイシー晩年のソロ・パフォーマンス。

ゆっくりと丁寧に、一音一音を積み重ねてゆくレイシー。

無駄な音など一つもなく、きわどいバランスで世界が構築されている。

まかり間違って一つでも無駄な音が挿入されたり、あるいは、一音でも失われたら、もろくも世界が崩れ去りそうなほど、精緻かつ構築的な世界。

彼が吹くソプラノサックスの旋律は、まるで賢者の呟きだ。

この呟きは、一聴、単純で分かりやすいかもしれないが、この呟きの行き着く先は、皆目見当がつかない。

だから、知的な興奮、静かな緊張感が漂う。

唯一、《ソング》のみ、ヴォーカルとのデュオだ。

アイリーン・アエビのヴォーカルにぴったりと寄り添うレイシー。

この雰囲気は、エリック・ドルフィーの『アザー・アスペクツ』の《ジム・クロウ》を彷彿とさせる独特の空気感に近いかも。

異次元への誘い、いや、別の世界への扉を開けているかのようだ。

音の情報量は少ないかもしれないが、間とニュアンスに富んだ世界ゆえ、真剣に向かい合うと、聴き終わった後の虚脱感はかなりのものがある。

深い。

記:2006/01/31

album data

SANDS (Tzadik)
- Steve Lacy

1.Who Needs It?
2.Gloompot
3.Jewgitive
4.Naufrage
5.Dumps
6.Sands(1)Stand
7.Sands(2)Jump
8.Sands(3)Fall
9.Song
10.On Vous Demande
11.Morning Joy

Steve Lacy (ss)
Irene Aebi (vo) #9

1998/02-04月 Paris

 - ジャズ