サッチモの凄さは、ヴォーカルよりもラッパにあり。
『この素晴らしき世界』も素晴らしいのだが
ルイ・アームストロング(サッチモ)の『この素晴らしき世界(What A Wonderful World)』は、彼の入門盤としては最適なアルバムかもしれない。
なんといっても《ホワット・ア・ワンダフル・ワールド》がこのアルバムを代表する名曲、名唄だが、私は2曲目の《キャバレー》も好きだ。
いつ聴いても、サビのところが、
♪ライフ・イズ・ア・キャバレー・ねえ、父ちゃん?
と聴こえてしまい、
「そうか、人生はキャバレーなんだよね、父ちゃん」
と、植木等の唄を聞いたときのような気分になってしまうのであった。
この2曲だけでも、サッチモの定番『この素晴らしき世界』は耳を通す価値のある楽しいアルバムだ。
ただ、注意して欲しいのは、このアルバムは彼の代表作には違いないけれども、それは、あくまで、ヴォーカルのアルバムとして、だ。
彼の偉大さはヴォーカルももちろんだが、その並外れたトランペットのプレイにあると思う。
徹底的に力強い!
彼のラッパの力強さといったらない。
威風堂々、ド真ん中、直球、ストレートの力強さがあり、これを前にすれば、マイルス・デイヴィスのラッパは、変化球だらけのクセ球だということがよく分かる。
もっとも、そこがマイルスの頭のいいところで、サッチモ(やディジー・ガレスピー)のようなトランペットプレイが自分には無理だと気付いたからこそ、彼らとは違うスタイルと領域を探求し、彼らとは違う土俵で研鑽、研究、努力をして、ジャズの帝王となったわけだから、それはそれで、素晴らしいことではある。
だから、もし『この素晴らしき世界』でサッチモに興味を持った人は、是非ホットセブン時代などの彼の力強いトランペットにも耳を傾けて欲しいと思う。
彼のラッパの凄さを味わうには、1920年代のキャリアの初期においての録音が最適な入門盤となってくれることだろう。
もともとはアルバムとしてレコーディングされた曲ではなく(LPが無かった時代だからね)、シングル単位で発表された曲をまとめたCDがいくつか出ているが、はじめての方におすすめしたいのは、『ザ・ベスト・オブ・ザ・ホット5・アンド・ホット7・レコーディングス』だ。
廉価な上に、充実編集。
まずはこれを聴くだけでも、今まで抱いていたサッチモとは異なる音が耳に飛び込んでくるに違いない。
記:2000/05/16
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