スピーク・ライク・ア・チャイルド/ハービー・ハンコック
2021/02/02
ユニークなアレンジ
ハービー・ハンコックが子供、少年をテーマに作曲したナンバーを収めている、夢見心地な一枚。
ジャズマン、ハービー・ハンコックの原点はクラシック。
卓越したピアノの操作技術に加え、彼の作曲・アレンジのセンスにはもっと注目してよい。
たとえば、代表作の『処女航海』などを聴けば分かるとおり、複雑なハーモニーの中、ドビュッシー的な音の広がりと、まるで風景画を音に移し変えたようなアレンジ。
これは彼以前のジャズマンにはなかった新しい資質でもある。
このアルバムで演奏されているナンバーも、その例に漏れず、といった感じか。
楽器の使い方が面白い。
主役はあくまでピアノ。
つまり、ピアノトリオにブラスを追加したといった感じ。
ピアノがホーンの伴奏をするのではなく、ホーンがピアノに色を添える。主客逆転ともいえる、楽器に課された役割。
サド・ジョーンズのような名だたるトランペット奏者がいるにもかかわらず(ここではフリューゲルホーンを吹いているが)、特に彼のソロプレイを大きくフィーチャーされることもなく、あくまでハンコックという画家が使用する絵の具のひとつという役どころになっているところが、贅沢といえば贅沢だ。
ピアノがメロディを奏でるために、贅沢にもサド・ジョーンズらホーン陣は、ハンコックのピアノを彩る伴奏係に徹している。
一聴、メロディの輪郭がつかみずらい曲もあるが、まずはムードに浸ろう。
聴いているうちに、マイルドなホーンサウンドに彩られた美しい旋律が浮かび上がってくるはずだ。
ちなみに、ジャケットの女性は、当時ハンコックの婚約者だったジジ・メイグスナー。
記:2006/05/24
album data
SPEAK LIKE A CHILD (Blue Note)
- Herbie Hancock
1.Riot
2.Speak Like A Child
3.First Trip
4.Toys
5.Goodbye To Childhood
6.The Sorcerer
Herbie Hancock (p)
Thad Jones (flh)
Peter Phillips (bass trb)
Jerry Dodgion (alto fl)
Ron Carter (b)
Mickey Roker (ds)
1968/03/06 & 09