フォーサイスとスピットファイヤー
フレデリック・フォーサイスの自伝『アウトサイダー~陰謀の中の人生』が滅茶苦茶面白く、一気に読むことが出来た。
もちろん、『ジャッカルの日』や『オデッサファイル』、そして『戦争の犬たち』を読んだ上でのことだが、仮にこれらの代表作を読んでいなくても、「事実は小説より奇なり」として、十分に面白く読めるのではないかと思う。
フォーサイスは、ジャーナリストとしての過去を持つことは知っていたが、そして、だからこそ、あれほど精緻に国際社会の裏側を描写できたのだろうが、フォーサイスが飛行機大好き人間だということは、この自伝を読むまでは知らなかった。
スピットファイヤーという戦闘機は、ドイツから英国の空を守った英国人にとっては特別な思い入れのある戦闘機だということも知っていたが、フォーサイスのこの本を読むと、それ以上のものがあるような気がする。
ちょうど我々日本人が零戦に対して、特別な思い入れがあるのと同じようなものをイギリス人はスピットファイヤーに対して抱いているのだろう。
だから、日本人が安易に英国人に向かって「スピットファイヤって、たしかオーストラリア方面の空戦で、零戦に負けた戦闘機だよね?」なんてことを言おうものなら、8丁のブローニング機関銃をぶっ放されそうなので気をつけねばならないかも。
80歳近くのフォーサイスが、スピットファイヤーを嬉々として操縦したりと、微笑ましい写真や記述もあるが、揺れ動く国際情勢の中、かなり危ない目にも遭っており、映画や小説にするにはスケール感に欠くかもしれないが、平凡な人生を送っている我々は絶対に遭遇しえない生々しくスリリングな体験も記されているので、ページをめくる手がどんどんスピードアップしていく。
そして、彼の数奇な人生の原点と、常に彼の意識の通奏底流に投げれているのは、英国空軍の戦闘機、スピット・ファイヤであり、バトル・オブ・ブリテンで勇敢にドイツ空軍と戦った英国パイロットたちのファイター魂への憧れと畏敬の念のような気がする。
フレデリック・フォーサイスの『アウトサイダー』は、彼のファンのみならず、スパイ小説好きや、現代社会や国際情勢に関心がある人にも是非読んでほしい刺激に満ちた本だ。
記:2018/04/26