スティット・ミーツ・ブラザー・ジャック/ソニー・スティット&ジャック・マクダフ
スティットはテナーが良い
ソニー・スティットは、アルトサックスとテナーサックスの両方をこなす。
個人的な好みを言えば、私はテナーをプレイするスティットのほうが好きだ。
アルトよりも悠々としているし、泰然自若な貫禄を醸し出しているように感じるからというのが大きな理由のひとつ。
アルトだと、どうしても「球質の軽いパーカー」のようなプレイゆえに、落ち着いて聴けないのだ。
だから、私が好きなスティットのアルバムはといえば、筆頭にはパウエルと共演した『スティット・パウエル・JJ』が思い浮かぶし、もう少しフォーマルな気分を崩して、リラックスして聴くスティットのテナーといえば、オルガンのジャックマクダフとの共演盤の本作が思い浮かぶ。
安定したマクダフのプレイ
アルバム冒頭を飾る余裕しゃくしゃくの《オール・オブ・ミー》のテーマの旋律はどうだ。
原曲の面影は濃厚に残しているのだが、スティット流の独自のフレーズが飛び出してきて、なかなか面白い。
最初から最後まで落ち着いた気分で聴ける演奏が続くが、これはひとえに、安定したマクダフのオルガン・ワークと、レイ・バレットのフロントを「煽る」のではなく「引き立てる」ことが巧みなパーカッションの賜物だと思う。
特に、あまり語られることはないかもしれないが、私はジャック・マクダフが繰り出すベースラインは、ラインの流れがとても分かりやすくて耳で追いかけやすい上に、とても安定していると思うのだ。
落ち着いた渋いグルーヴ感を放つこのアルバム中の演奏は、実はマクダフのオルガンによるベースラインの賜物のではないかと思ってしまうほどだ。
いずれにしても、渋い組み合わせの、渋いアルバムであることには間違いない。
記:2003/12/01
album data
STITT MEETS BROTHER JACK (Prestige)
- Sonny Stitt
1.All Of Me
2.Pam Ain't Blue
3.Time After Time
4.Ringin' In
5.'Nother Fu'ther
6.When Sunny Gets Blue
7.Thirty-Three,Ninety-Six
Sonny Stitt (ts)
Jack McDuff (org)
Eddie Diehl (g)
Art Taylor (ds)
Ray Barretto (conga)
1962/02/16