最強のジャズ・テナー、ジョニー・グリフィン
text:高良俊礼(Sounds Pal)
「バトル野郎」グリフィン
ジャズという音楽の魅力といば、何といっても個性溢れるプレイヤー達による、手に汗握るアドリブだろう。
ジャズはその創世期から、即興演奏によっていかに聴衆を沸かせるかが重要なポイントだった。
その流れの中から飛び抜けて存在感を示したのが、「初代ジャズ王」といわれたバディ・ボールデンであり、その後を継いだキング・オリヴァー、そしてルイ・アームストロングであったと言われている。
初期ジャズのソロの花形は、他の楽器より大きな音を出せたコルネットだったが、1930年代にコールマン・ホーキンスがサックスでソロを吹くスタイルを確立してからは、サックス、特にテナー・サックスがソロバトルの主役といて踊り出て、チャーリー・パーカーがその演奏法を大胆に進化させた後は、モダン・ジャズの世界でサックスの「主役」としての存在はますます揺るぎないものになっていった。
さて、モダン・ジャズのサックス奏者で「バトル野郎」といえばジョニー・グリフィンである。
おすすめは、コレだ!
170cmに満たない小柄な体にやや大きめなテナーを構え、どデカい音と驚異的なテクニックでバリバリ吹きまくるグリフィンは、1950年代の半ばまでには強豪がひしめくシカゴを制してニューヨークへ進出していった。
『イントロデューシング・ジョニー・グリフィン』は、勢いに満ちた「吹きまくり野郎」としてのグリフィンの凄さにガツンとヤラレるニューヨーク・デビュー作。
ピアノにウィントン・ケリー、ベースにカーリー・ラッセル、ドラムはマックス・ローチというシンプルなワン・ホーン編成、特にチャーリー・パーカーと共にビ・バップをバリバリ演奏していたリズム隊を見るだけでもう興奮するが、内容はその興奮を上回る。
1曲目の《ミル・デュー》からもうアクセル全開で飛ばすグリフィンの演奏は、体感速度が凄いだけでなく、音色も安定していてテナーらしいズ太いものだ。理屈っぽいところも思わせぶりなところもなく、ひたすら明快豪快爽快なのが、この演奏に特化した最強のテナー吹きの持ち味であり、すなわちジャズそのものの根源的なカッコ良さだなとつくづく思う。何度聴いてもそう思う。
もちろん彼の真骨頂は速吹きだけでなく、バラードでの神経の行き届いたメロディアスさにもあって、そこらへんはこのアルバムでも《ジーズ・フーリッシュ・シングス》、《ラヴァーマン》あたりで存分に発揮されてはいるが、まずは全力で脇目もふらずに吹きまくるグリフィンの熱演を浴びて、単純に「うわぁ、ジャズかっこええ!」となってほしい。
text by
●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル)
記:2017/07/09