親切なライナーノーツとして読めばジャズをもっと楽しめる!小川隆夫・著『ジャズ超名盤研究』

      2021/02/12

ちょっとしたジャズマニアであれば、下に掲載した全36枚のアルバムはすべて持っていることと思います。

かけ算でいえば、九九に相当するような基本的なアルバムセレクションで、とにもかくにも四の五の言わず、これらを聴いてないと、話がはじまらんでしょ的な名盤中の名盤ばかりです。

しかし、これらすべてのアルバムを日本盤・ライナーノーツ付きで持っている人ってほとんどいないのでは?

その多くは輸入盤だったりで、英語で書かれたライナーなど目を通してないという人のほうが多いのでは?

最近だとアルバムをダウンロードしてデータで持っている人も増えてきていると思われ、とにもかくにも日本盤のライナーノーツ付きのアルバムを持っていない人は、音のみの情報で、ジャズを楽しんでいることと思います。

もちろんそのような楽しみ方もアリだと思っていますが、ライナーノーツによる文字情報に接することなく、音だけを聴いている人は、アルバムが録音された背景や歴史的意義、参加している演奏者のプロフィールや、録音された曲1曲ごとの子細な解説など読んだこともないでしょうし、もしかしたら曲のムードだけを楽しむことに終始しているのではないかと思います。

もちろん、そういう楽しみ方もアリかもしれませんが、ちょっとした文字情報を頭の隅っこに入れて聴くだけで、さらに楽しくジャズを鑑賞できることは、この私自身も経験済みです。

なので、既に持っていて何度も聴いて「もう聴き飽きたよ」という音源も、ちょっとした活字情報による「補助線」がアタマの中にインプットされるだけで、また違った角度から違った楽しみ方をできる可能性が大いにあるのです。

したがって、この本は、輸入盤しか持っていないジャズファンのための「丁寧なライナーノーツ」として読むと良いでしょう。

なにしろ、このアルバムが生まれた背景から、曲目解説、参加ミュージシャンの詳しいプロフィールから、アルバムにまつわるこぼれ話、そのミュージシャンやアルバムに影響を受けたジャズマンたちのコメントなどの情報がテンコ盛り。

「丁寧なライナーノーツ」と先ほど書きましたが、こんなに親切なライナーノーツって他にないですよ。

なので、もしアルバムは持っているけれどもアルバムにまつわる詳しい情報はあまり知らないという人は、ぜひ音源を聴きながらページをめくることをおススメします。

さて、この本の構成についてですが、かつて『スウィング・ジャーナル』に連載されていた34枚のジャズ超名盤の解説を加筆修正されて録音年代順に再編集されています。

曲の解説は、ちょっと楽理的な内容にも触れられているテキストもあり、小川さん的な解説ではないなぁと思って読んでいたら、この個所は小川さんではなく『Swing Journal』編集部が発注したライターに書いてもらったところもあるのだそうです。どうりで。
しかし、小川さんテイストの曲目解説のテキストもあるので、どこまでが編集部が雇ったライターの文章で、どこまでが小川さんが書いたものなのかの判別はつきにくいですね。

もっとも書籍化の際に、小川さんが加筆修正して小川テイストの文章になっただけなのかもしれないけれど。

収録されている「超名盤」は全36枚。
同日録音のライブ盤も含まれているため、項目は全34章となっています。

こんなラインナップです。

01 ビリー・ホリデイ『奇妙な果実』
02 アート・ペッパー『サーフ・ライド』
03 チャーリー・パーカー『ナウズ・ザ・タイム』
04 アート・ブレイキー『バードランドの夜 Vol.1 & Vol.2』
05 ヘレン・メリル『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』
06 マイルス・デイヴィス『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』
07 アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ『カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ Vol.1 & Vol.2』
08 チャールズ・ミンガス『直立猿人』
09 マイルス・デイヴィス マラソン・セッション4部作『クッキン』『リラクシン』『ワーキン』『スティーミン』
10 ソニー・ロリンズ『サキソフォン・コロッサス』
11 セロニアス・モンク『セロニアス・ヒムセルフ』
12 ソニー・クラーク『クール・ストラッティン』
13 キャノンボール・アダレイ『サムシン・エルス』
14 アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ Vol.1 – Vol.3』
15 バド・パウエル『ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.5/ジ・シーン・チェンジズ』
16 マイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』
17 オーネット・コールマン『ジャズ来るべきもの』
18 デイヴ・ブルーベック『タイム・アウト』
19 マイルス・デイヴィス『スケッチ・オブ・スペイン』
20 マル・ウォルドロン『レフト・アローン』
21 ジョン・コルトレーン『マイ・フェイヴァリット・シングス』
22 ビル・エヴァンス『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』『ワルツ・フォー・デビイ』
23 エリック・ドルフィー『アット・ファイヴ・スポット Vol.1 & Vol.2』
24 ジョン・コルトレーン『バラード』
25 ソニー・ロリンズ『橋』
26 スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト『ゲッツ=ジルベルト』
27 ホレス・シルヴァー『ソング・フォー・マイ・ファーザー』
28 リー・モーガン『ザ・サイドワインダー』
29 オスカー・ピーターソン『プリーズ・リクエスト』
30 ジョン・コルトレーン『至上の愛』
31 ハービー・ハンコック『処女航海』
32 チック・コリア『リターン・トゥ・フォーエヴァー』
33 キース・ジャレット『ケルン・コンサート』
34 V.S.O.P.クインテット『ライヴ・イン・ジャパン/熱狂のコロシアム』

ああ、全部持ってるよ、全部聴いたよ、というジャズファンにこそ、読んで欲しい本ですね。

もちろん、読んでから興味を持った音源を聴くという楽しみ方もアリでしょうけれども、この本の場合、「読んでから聴く」よりも、「聴いてから読む」、あるいは「聴きながら読む」ほうがジャズ鑑賞の愉しみは倍増するのではないかと思っています。

さ、この本とともに、ジャズ観賞の愉しみよ再び!

記:2018/05/25

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