シュガー/スタンリー・タレンタイン

   

比較的あっさり

足の指をペロリと舐めている女性の横顔が大きく写し出されているジャケットが、ソウルのレコジャケっぽいテイストを醸し出している。

しかし、泥臭く威風堂々としたタレンタインのブロウは、どこまでもソウルフルなので、“ジャズっぽくない下品なジャケット”という人もいるが、私はそんなこともないんじゃないかと思う。

もっともこのジャケットから連想されるほどのコテコテさはなく、比較的あっさりとした演奏が多い。
しかし、粘りと重量感はある。

曲は長いがまったく飽きない

スタンリー・タレンタインは、一聴すればすぐに分かるほど非常に独特な節回し(訛り)の持ち主だが、ここに収録されている曲のどれもが彼の魅力を存分に発揮させるに充分な選曲となっている。

パワフルな「剛」の部分と、あくまで男性的な「柔」がバランス良く共存するタレンタインのテナーには、ピアノよりもむしろオルガンやギターが良く似合う。

ジョージ・ベンソンのギターに、ロニー・スミスのオルガンとのサウンドテイストの絶妙なマッチング。これもこのアルバムの雰囲気を決定ずける大きな要因の一つだろう。

サイドのホーンは、フレディ・ハバードに、泥臭さをさり気なく引き立てるパーカッションの隠し味。
この豪華な布陣によるコテコテ過ぎない、ほどよく濃く、重い内容。
腹八分目の黒さが心地よく、何度でも繰り返し聴ける優れたアルバムだ。

タレンタインのテナー、あの音色、あの節回しじゃなきゃ似合わないんじゃないかとすら思ってしまう《シュガー》。

アーシーなテイストの《サンシャイン・アレイ》。

コルトレーンの演奏とは雰囲気を異にする悠々とした《インプレッション》は、微妙なテンポ設定が秀逸。
トレーンのような「突進型」な演奏ではタレンタインの節回しを楽しむ余裕がないからね。

フレディ・ハバードの隠れた名曲《ジブラルタル》は、輝くフレディのトランペットと、重心の低いタレンタインのトーンが絶妙な色彩を生み出している。

以上4曲、10分を超える長尺演奏がほとんどだが、充実した演奏ゆえ、飽きることはまったくない。

ブルーノートを離れたスタンリー・タレンタインのCTIレーベルからの第一作目、そして傑作。

記:2003/07/04

album data

SUGAR (CTI)
- Stanley Turrentine

1.Sugar
2.Sunshine Alley
3.Impressions
4.Gibraltar

Stanley Turrentine (ts)
Freddie Hubbard (tp)
George Benson (g)
Lonnie L.Smith,Jr. (el-p)
Dollar Brand (p,vo,fl)
Ron Carter (b)
Billy Kaye (ds)
Richard "Pablo" Landrum (per)

1970年11月

 - ジャズ