サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード/ビル・エヴァンス

   


Sunday At The Village Vanguard

なんといってもラファロが恋人に捧げた曲

《グロリアズ・ステップ》。

この一曲があるゆえに、『サンディ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』は、私にとっては永遠の愛着盤だ。

なんという美しいメロディ、儚い美しさを秘めた曲なのだろう。

まさにエヴァンスのデリケートなタッチのためにある曲だ。

つまり、曲の心と演奏者のスタイルの相性が抜群に良い曲なのだ。

しかし、エヴァンスの作曲なのかといえば、さにあらず。作曲者はスコット・ラファロ。

さすがに“動くベース”でエヴァンスを挑発し、エヴァンスを触発し、最終的には美しさと躍動感に溢れる演奏に導く“名ナヴィゲーター”だ。

エヴァンスの資質をよく理解している。だから、“エヴァンスに弾かれたがっている曲”を作ることが出来るのだろう。

CDには2バージョンの《グロリアズ・ステップ》が収録されているが、どちらのバージョンも捨てがたい。

もっとも、私個人の好みを言えば、よりベースの躍動感を楽しめる《テイク3》が好きだ。
《テイク3》では、《テイク2》以上に執拗に3連符を繰り返すラファロ。
彼が演奏中に思い浮かべたグロリアの踊りは、3拍子だったのだろうか。

柔らかなエヴァンスが紡ぎだすメロディとハーモニー。これに優しく大きくウネりながら絡んでゆくラファロのベース。

この二人のうっとりとするような絡みを聴きたくて、今日も私はCDをトレイに乗せるのであった。

名盤『ワルツ・フォー・デビィ』と同じく、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音。 この演奏の10日後にスコット・ラファロ、事故死。

記:2007/07/09

album data

SUNDAY AT THE VILLEAGE VANGUARD (Riverside)
- Bill Evans

1.Gloria's Step (take 2)
2.Gloria's Step (take 3)
3.My Man's Gone Now
4.Solar
5.Alice in Wonderland (take 2)
6.Alice in Wonderland (take 1)
7.Jade Visions (take 2)
8.Jade Visions (take 1)

Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (ds)

1961/06/25

 - ジャズ