即興演奏家のためのシンフォニー/ドン・チェリー
元気が出る集団即興演奏
一言、気持ちいい。
集団即興演奏に近い形の演奏だが、騒々しく感じないどころか、むしろ爽快ですらある。
もちろん、人によっては騒々しいと感じるかもしれないが(特にガトーのテナーサックスが)、決して演奏に参加している楽器群から放射されるオーラは「陰性」のオーラではなく、ましてや「負」のオーラでもなく、明るいエネルギーに満ちた「陽性」のオーラであることは間違いなく、だからボリュームを上げて、浴びるようにドン・チェリー以下、ガトー・バルビエリやファラオ・サンダースらがのびのびと繰り広げる即興演奏に触れれば、誰もが元気をもらえるのではないだろうか。
エド・ブラックウェル
よく聴くと、演奏の鍵を握り、長尺演奏が陥りやすい単調さを防いでいるのは、ドラマーのエド・ブラックウェルだということがわかる。
極端なことを言えば、エド・ブラックウェルのドラムだけでも聴けてしまうアルバムなのかもしれない。
脳の裏側を心地よく涼やかにマッサージをしてくれるライドシンバルによるレガート。
スピード感を強調する心地よいスネア。
ポイントとなるところに出現する細やかなハットワーク。
「あ、またこのオカズのパターンが出現したな」とニヤリとする楽しみもある。
いずれにしてもエド・ブラックウェルというドラマーの音楽性の高さを実感できるアルバムだといえるだろう。
カール・ベルガー
そしてもう一つ。
演奏を聴きやすくしている大きな要素として、カール・ベルガーのヴィブラフォンがあげられる。
ヴァイブに涼やかな音色が、演奏に風通しの良さをもたらしており、よいアクセントとなっている。
即興演奏とはいえ、徹頭徹尾フリー・インプロビゼーションというわけでもなく、ところどころに現出する素朴なメロディーの断片は、おそらくはドン・チェリー作曲によるものだろう。
素朴でシンプルなフレーズは、非常にオーネット的なニュアンスを感じるが、逆にオーネット・コールマンのメロディ感覚は、かなりチェリーからの影響も大きいということもわかる。
『即興演奏家のシンフォニー』を大きな音でかけっぱなしにしていると、自然、脳が「躁」状態に成ってくるので、原稿を書いている時などは、かなりはかどること請け合い。
ブロガーの皆さん、いかがですか?
記:2015/11/09
album data
SYMPHONY FOR IMPROBISERS (Blue Note)
- Don Cherry
1.Symphony for Improvisers: Symphony for Improvisers/Nu Creative Love
2.Manhattan Cry: Manhattan Cry/Lunatic/Sparkle Plenty/Om Nu
Don Cherry (cor)
Gato Barbieri (ts)
Pharoah Sanders (ts,piccolo)
Karl Berger (vib, p)
Henry Grimes (b)
Jean-François Jenny-Clark (b)
Ed Blackwell (ds)
1966/09/19