テイク・ラヴ・イージー/エラ・フィッツジェラルド&ジョー・パス
深夜に聴くエラ
これはまさに名人芸だ。
エラ・フィッツジェラルドは、本当に全天候型・万能ヴォーカリストなんだなと、しみじみ感じてしまう。
名盤にして彼女の代表作の1枚『エラ・イン・ベルリン』を聴けば、
ノリの良さ、
バラード表現の深さ、
スキャットの巧みさ、
聴き手に「陽」のエネルギーを分け与える明るいパワー、
などなど、
全領域の表現力において“完璧”という言葉を贈っても良いほど、彼女のヴォーカルは、オールレンジにおいて素晴らしいものがある。
このアルバムでのエラはしっとり系。
バラード中心のしんみり&スロー系ナンバーをしっかりと丁寧に歌う。
伴奏はジョー・パスのギター1台のみ。
しかし、これが素晴らしいんだなぁ。
ジョー・パスの心温まる伴奏。
ぴったりとエラの歌唱に寄り添う。
エラの歌に集中して聴けば聴くほど、ジョー・パスのギターの巧みさに耳が行き、ジョー・パスのギターに意識を集中させれば、今度は、エラのヴォーカルがギターと溶け合うように浮かびあがってくる。
しかも、色彩で言えばモノトーンだが、けっしてダークではない。
まるで、互いが陰になり日向になりの過不足なしのベストなコンビネーション。
息もピッタリに、互いを尊重しあい、丁寧に歌を紡いでいる。
地味かもしれないが、滋味溢れる演奏。
ベテランだけに出せる深い味わいだ。
じっと聴き入れば、染みてくる一音一音が、そっくりそのまま心の栄養源。
是非、深夜、一人酒のお供に。
記:2008/06/23
album data
TAKE LOVE EASY (Pablo)
- Ella Fitzgerald & Joe Pass
1.Take Love Easy
2.Once I Loved
3.Don't Be That Ways
4.You're Blase
5.Lush Life
6.A Foggy Day
7.Gee Baby, Ain't I Good to You
8.You Go to My Head
9.I Want to Talk About You
Ella Fitzgerald (vo)
Joe Pass (g)
1973年