エリントンの《いれずみ花嫁》
2018/09/06
アスペクト・イン・ジャズで紹介されたナンバー
ジャズ評論家の大御所、油井正一氏の「アスペクト・イン・ジャズ」。
「あ、それ、むかし聴いてた!」と懐かしい顔をする人は、おそらく40代後半以上の方々でしょう。
この番組でジャズの勉強をしたという方も私の周囲には多く、へぇ、聴きたいなぁとは常々思っていた。
しかし、残念ながら、この番組が放送されていた1973~79年の間の私は、まだまだ小学生。
残念ながらリアルタイムで聴くことはできなかった。
そんな私にとって、嬉しいことに、この番組はミュージックバードで再放送をしているんだよね。
だから、時間がなるべく耳を澄ますようにしている。
やっぱり油井さんの喋りはうまい。
引き込まれる。
特に最近は、むっつり親父のボソボソ調の会話(笑)が魅力な「PCMジャズ喫茶」ばかりを聞いていたこともあって、その思いもひとしお。
もちろん、寺島さんのむっつり親父のボソボソ調な喋りは、嫌いではない。
それはそれで、「ジャズ喫茶のオヤジだなぁ~」と心の底から納得させられるだけの喋りではあり、それこそがこの番組の魅力だと持っている。
それに対して、あくまで「油井節」は正統派。
プロの喋り。
放送向きの声だね。
将来はもっともっと講演やセミナーの回数を増やす予定でいる私にとっては、大変参考になる。
そして、明快な解説と歯切れのよい独特のリズム感を持つ油井さんの喋りは、特に喋りに集中して聞いていなくても、自然に頭の中に抵抗なく情報が流れ込んできてくれる。
そこがいい。
ながらでジャズのお勉強。
今だにファンが多いのも頷ける。
いれずみ花嫁
さてさて、先日4月16日の放送は、50年代のエリントンの音楽の特集だった。
最初にかかった曲がめちゃくちゃ良かった。
1950年12月に録音された、デューク・エリントン楽団のために企画された初のポピュラー音楽のためのアルバム『マスター・ピーセズ・バイ・エリントン』より、《いれずみ花嫁(The Tattooed Bride)》。
チャールズ・ミンガス作曲私の大好きな曲《オレンジ色のドレス》とそっくりの曲だが、もちろん順序は逆。
ミンガスがエリントンの影響を濃厚に受けているわけで、彼の基本的な音楽スタイルは、エリントンがオーケストラで表現した音をミンガスがコンボで表現しようという目論見が、ミンガス・ミュージックのベーシックな屋台骨ともいえる。
よって、ミンガスの音楽が大好きな人は、どんどんエリントンにさかのぼってゆくとよい。
もちろんミンガスも良いが、エリントンのほうがさらに多彩。
それは、物理的にバンドを構成する楽器奏者に人数の多さもあるし、メンバー発する音の特徴をエリントンは収支徹底して把握していたということもある。
にしても、《いれずみ花嫁》のメイン旋律をつかさどるジミー・ハミルトンのクラリネットの音色の艶かしいこと。
なんというか、いやらしい(笑)。
いや、汚いいやらしいじゃなく、綺麗ないやらしい。
ヘンな日本語だ(笑)。
演奏のテンポは急速調になったり、ミディアムスローになったりと変化を繰り返すが、特にゆったりとしたミディアムスローのテンポは、まるでゆったりと腰をくねらせるかのごとくで、エキゾチック・エッチ。
ヘンな日本語だ(笑)。
この《いれずみ花嫁》は、なんともエロっぽい、いや失礼、色っぽい編曲ではある。
最近は倖田來未が「エロかっこいい」ようだが、こちらのほうが元祖「エロかっこいい」だ。
しかも、品性も品格も教養もたっぷりと兼ね備えた「エロかっこいい」の世界。
一発で虜になった。
そして、未聴の『マスター・ピーセズ・バイ・エリントン』を買わなくては!と思ったことは言うまでもない。
記:2008/04/17