セロニアス・イン・アクション/セロニアス・モンク
グリフィン! リズム・ア・ニング!
『ミステリオーソ』と同じく、ファイブスポットでのライブの模様を収録したアルバムだ。
どちらも同日のライブ演奏を収録しているので、演奏のクオリティは両アルバムとも高く、内容に関しては甲乙付け難いものがある。
というより、甲乙付けても仕方がないので、あとは演奏内容や、好みの曲で自分好みのほうを聴けば良いだけの話だが…(私は『イン・アクション』のほうが好み)。
両アルバムを名盤たらしめている大きな理由の一つが、ジョニー・グリフィンの参加だろう。
とにかくグリフィンのテナーが熱い!!
しかし、猛烈と吹きまくるグリフィンのテナーの迫力だけを味わいたければ、彼が参加しているほかのアルバムはいくらでもある。
ここでの聴きどころは、モンクとグリフィンの鮮やかな対比だろう。
パワフルなグリフィンのテナーによって、より一層浮かび上がってくるモンクのピアノの「異物感」と、常人には理解しがたい、セロニアス・モンクという作曲者・ピアニストの思考システムだ。
和音の音使いが独特。
演奏の間の取り方が独特。
これは、よく言われていることだし、モンクを聴いたことのある人なら、誰もが最初に感じることに違いないが、それでも、グリフィンのブロウによって浮き彫りになるモンクのピアノは、あらためて「うーん、本当に独特だ」と感じるに違いない。
グイグイとエネルギッシュに吹きまくるグリフィン。
この猛烈な勢いにクサビを打ち込むかのような、モンクのバッキング。
グリフィンのテナーが「動」だとすれば、モンクのバッキングは「静」だ。
「動」の勢いが増せば増すほど、モンクの「静」が異様なまでに浮かび上がってくる。
この対比が非常に面白い。そして、言いようも無い緊張感を生み出している。
個人的には《リズマニング》の演奏がとても好きで、この1曲のために、『ミステリオーソ』よりも『イン・アクション』をかける頻度が多いぐらいなのだ。
吹けば吹くほど勢いを増すグリフィンのソロにも興奮するが、モンクのピアノ・ソロも別な意味での興奮とスリルを呼び起こす。
モンクのソロは、当然グリフィンのように一直線に熱いアドリブではない。
飄々とマイペースなのはいつもの通りだが、モンク独特の間の取り方と、フレーズの畳み掛け方、そして「冷静に狂っている」としか言いようの無いエキサイティングで、かつ怜悧なピアノが、ゾクゾクするほどの迫力なのだ。
モンクがこのようなソロを取っている間、さり気なく演奏に勢いをつける心配りを発揮している、ロイ・ヘインズの好サポートぶりも見逃せない。
モンクによる《リズマニング》の演奏は他にもたくさんあるが、『セロニアス・イン・アクション』のバージョンが、最も異色で、かつ白熱した演奏だと思う。
個人的には、文句無しに『イン・アクション』の《リズマニング》がベストなバージョンだと思っている。
ほか、まったりと知的な《ライト・ブルー》、素っ頓狂なテーマが楽しい『ブルース・ファイブ・スポット』も良い出来だと思うし、演奏終了前のところどころに挿入される《エピストロフィー》も、いかにもライブを聴いているという気分になれる。
記:2002/09/17
album data
THELONIOUS IN ACTION (Riverside)
- Thelonious Monk
1.Light Blue
2.Coming On The Hudson
3.Rhythm-A-Ning
4.Epistrophy
5.Blue Monk
6.Evidence
7.Epistrophy (theme)
8.Unidentified Solo Piano (*)
9.Blues Five Spot (*)
10.In Walked Bud/Epistrophy (theme) (*)
(*)…LP未収録曲
Thelonious Monk (p)
Johnny Griffin (ts)
Ahmed Abdul-Malik (b)
Roy Haynes (ds)
1958年8月