私の考えるジャズ/クインシー・ジョーンズ

   

クインシーの初リーダー作

クインシー・ジョーンズ、若干23才の時の初リーダー作が『ジス・イズ・ハウ・アイ・フィール・アバウト・ジャズ』、邦題では『私の考えるジャズ』として知られている作品だ。

クインシー23歳

アート・ファーマー、フィル・ウッズ、ジーン・クイル、ラッキー・トンプソン、ズート・シムズ、ハービー・マン、ミルト・ジャクソン、ハンク・ジョーンズ、ミンガス、チェンバースなどなど、当時、若干23歳のクインシーにしてみれば、仰ぎ見るほどのベテランかつ大先輩たちがメンバーの多くを占めている。

1951年にバークリー音楽院を卒業し、およそ5年後には、もうこのような大物ジャズマンの陣頭に立って、アレンジ、指揮をするほど成長しているクインシー、恐るべし。

楽器奏者の個性を活かす編曲

もっとも、このような贅沢な人選は、ライオネル・ハンプトン楽団や、カウントベイシー楽団でのアレンジを担当していたクインシーの実績もあるにせよ、このアルバムのプロデュサーであるクリード・テイラーの力もあったのかもしれない。

上記、豪華な参加ジャズマンの名前を見ればわかるとおり、一人一人がリーダーを張れるだけの実力とネームバリューの持ち主ばかりだ。

クインシーは、彼らの個性を最大限に活かすようなアレンジを施している。

つまり、デューク・エリントンや、ギル・エヴァンスのオーケストラのように、各メンバーの音をブレンドすることでリーダーの「個人色」を濃厚に出すアレンジではなく、ひとりひとりの管楽器奏者の個性を重視し、彼らが繰りなすアドリブをさりげなく引き立て彩ることを優先したアレンジだ。

このレコーディングの約3年前に、クインシーは『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』のアレンジも手がけているが、このアルバムでもアレンジも控えめで、アレンジャーとしての「色」を前面に押し出すことなく、むしろ、ヘレンのヴォーカルやブラウニーのペットを前面に押し出し、彼らのもっとも良い部分を切り取るかのようなアレンジになっている。

だから、まるでコンボ編成のジャズのような感覚で聴けるし、アンサンブルがスッキリとしていて、とても聴きやすい。

抑えるところはキッチリと抑え、ツボを心得たアレンジは、それぞれの楽器奏者の特性を十全に把握した上でこそ可能なこと。

クインシーが人の個性を見分ける能力が高いということがよくわかる。

だからこそ、彼は後年、大物プロデューサーとして大成したのだろう。

なおクインシーは、若い頃はトランペット奏者としても活躍していたが、この初リーダー作では、アレンジと指揮に専念しており、トランペットは吹いていない。

記:2015/08/06

album data

THIS IS HOW I FEEL ABOUT JAZZ (ABC Paramount)
- Quincy Jones

1.Walkin'
2.A Sleepin' Bee
3.Sermonette
4.Stockholm Sweetnin'
5.Evening in Paris
6.Boo's Bloos

Quincy Jones (arr,cond)
Art Farmer,Bernie Glow,Ernie Royal,Joe Wilder (tp) #1,2
Art Farmer (tp) #3,4,5,6
Frank Rehak,Urbie Green (tb) #1,2
Jimmy Cleveland (tb) #5,6
Herbie Mann (fl) #3,4,5.6
Phil Woods (as) #1,2,5,6
Gene Quill (as) #3,4
Jerome Richardson,Bunny Bardach,Lucky Thompson (ts) #1,2
Lucky Thompson (ts) #4,5,6
Zoot Sims (ts) #3
Jack Nimitz (bs)
Milt Jackson (vib) #3,4
Hank Jones (p) #1,2,3,4
Billy Taylor (p) #5,6
Paul Chambers (b) #1,2
Charles Mingus (b) #3,4,5,6
Charlie Persip (ds)

1956/09/14 #3.4
1956/09/19 #5,6
1956/09/29 #1,2

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