ジス・イズ・タル・ファーロウ/タル・ファーロウ
ライヴ感覚で聴ける
ジャズのライヴハウスでの1セットは、店やグループにもよるが、だいたい40分から60分前後。
このアルバムに収録されたタル・ファーロウによる演奏はライヴではなく、スタジオ録音だが、まるでライヴハウスで充実したライブの1セットを楽しめるような内容となっている。
心地よいライヴの幕開けを告げる急速調の《リーン・オン・ミー》、2曲目の《ワンダー・ホワイ》は一転してリラックスしたミドルテンポの演奏、そして、最初のクライマックスを3曲目の《ナイト・アンド・デイ》に持って行く流れがウマい。
まるでこちらの気持ちを先取りしているかのようなテンポ設定と選曲で、まったく飽きることなく充実した時間が過ぎ去っていく。
しかも、演奏にまったく隙がない。
タルのギターはもちろんのこと、彼を支えるエディ・コスタのピアノ、ピッタリと寄り添い合うビル・テイカス(後半はノビー・トーター)のベースとドラムスのジミー・キャンベルのコンビネーションは抜群。
密集度の高いドライヴ感を生み出している。
そして、ジミー・キャンベルは、スティックを一切使わず、ブラシのみに徹しているところも良い。
ブラシのシャッ!スッ!という音がクリアに捉えられているため、聴いているほうは、このギターカルテットの演奏を間近で聴いているような錯覚におそわれる。
太い音色で奏でられるタルのギターは、特に低音の弦の震えが生々しく、ブルブルと太い弦が、かすかにフレットに弦が当たる音まで聞こえてくるような臨場感だ。
緊密にまとまったメンバーたちの演奏力、申し分のない構成、本当に充実した時間をもたらしてくれる上に、アルバム1枚をあっという間に聞き通せてしまう。
それだけ充実した演奏に引き込まれ、集中してしているからなのだろう。
これを聴くたびに「ああ、良いライヴを存分に味わえた!」という満足感に浸れるのだ。
記:2015/02/24
album data
THIS IS TAL FARLOW (verve)
1.Lean on Me
2.Wonder Why
3.Night and Day
4.Stella by Starlight
5.The More I See You
6.All the Things You Are
7.How Long Has This Been Going On
8.Topsy
Tal Farlow (g)
Eddie Costa (p)
Bill Takas (b)
Knobby Totah (b)
Jimmy Cambell (ds)
1958/2/17,18
1958/3/3