最近発売ラッシュの苫米地本の内容から考えたこと
以前も言いましたよね?
「先ほども申し上げたとおり」という言葉が口癖の人がいる。
これって、一見、有能そうなしゃべり方かもしれないが、言われたほうは、あまりいい気持ちがしない。
「あのさー、俺、さっきも同じこと言ったんだけども、アンタ聞いてなかったのか?」と遠まわしに言われているような気分になるからだ。
同様に、ネット上だと、メールや掲示板のやり取りなどの問いかけに対して、「以前~にも書いていますが、それを読んでいただければおわかりのように~」
という言い方をする人がいる。(あ、それって俺じゃないか!)
これも、読んだほうの気分は、「あのさー、俺、同じ内容を別な場所に既に書いているんだけども、読んでないのか? それぐらい読んでからモノ言えよ」と言われているような気分になり、たぶんあまりいい気分にならないと思う。
「こちらは、ちゃんとやってます。見逃しているのはおたくのほうですよね?」
そう言われている気分にどうしてもなってしまうからね。
相手のことを考える想像力
じつは、これって、私もよく書いてしまいがちなことなので、自戒も込めて書いているんだけども、ネット上で「他の記事を読んでください」は、たぶん、通用しない。
私の場合、メルマガは1000号以上、記事コンテンツも1000本以上書いているので、「もう同じことを書くのはたくさん!」という気分に陥ることが多く、ついつい「また同じことを書くんかい!?」という気分になることもたまにある。
だから、
「以前、○△□という記事にも書いたのですが~」
というような前置きを、ちょっといやみったらしく書いたことが過去に何度かある(反省)。
でも、質問してくる人は、きっとその記事を読まずにアプローチしてくるし、「詳しくはどこどこを読め」と書いても、きっと読まない人のほうが多いんじゃないかと思う。
あるいは、読んだとしても、その人は、「あっちにも書いたから、あっち読めよ」と過去の記事にふられることを望んではいない。
質問してくる相手の事情も察する想像力を持つことが必要なのだ。
同じ内容を繰り返すこと
ワンパターンになっても、同じ言葉の繰り返しになっても、その人は、同じ言葉を不特定多数にではなく、自分本人に向けてもう1度語ってもらいたいのだ。
俺に向かって語りかけておくれよ
そう期待しているのかもしれない。
その場で結論を得たい人も多いし、コミュニケーションを完結したい人も多いのだ。
だから、同じことを繰り返すことを面倒くさがってはいけない。
本音では「なんだよ、コイツ、甘ったれてるなぁ~」と思ったとしても、その感情はつとめて出さないほうが良い。
それにメリットもないわけではないのだ。
同じ内容でも、相手によってニュアンスは変わるだろうし、以前読んだことがある人も、違う言い回しで書かれていれば、新鮮に感じることもある。また、繰り返すことによって、この人の考え方は、やっぱり一本筋が通ってるなと思わせることも可能だ。
最近の苫米地本
最近のビジネス書(自己啓発本)だって、たとえば苫米地さんの本なんかがそうだよね(笑)。
本は違うけれども、書かれている内容に重複はたくさんあるし、それがイヤだ損したと感じる人もいるだろうけれども、ファンにしてみれば、「ああ、またタイガー・ウッズの話ね(笑)」みたいな気分で読めるうえに、一度読んだ内容の反復でより一層、氏の主張が刷り込まれる効果もある。
たとえば、以下の3冊。
もっとも、各出版社の編集者も、新しい切り口を引き出そうとはせず、「以前、○○出版社で書かれた内容のような本を書いてください」とオファーしているだけなのかもしれないけど。
繰り返すことで磨かれる
ジャズで言えば、アート・ブレイキーだって、生涯に何度《モーニン》や《ブルース・マーチ》を演奏したか分からないと思うし、ソニー・ロリンズも、もしかしたら今晩も《セント・トーマス》をどこかで吹いてているかもしれない。
ちなみに《セント・トーマス》は、1956年の『サキソフォン・コロッサス』に録音された曲だから、じつに50年以上彼は演奏しつづけているわけだ(演奏していない年もあるかもしれないけど)。
コルトレーンだって死ぬまで執拗に《マイ・フェイヴァリット・シングズ》を、アプローチを変えながら演奏しつづけた。
だから、
ワンパターンを恐れてはいけない。
繰り返しを面倒くさがってはいけない。
以前、内藤晃代さんのヨガ教室にちょっとだけ通っていたことがあるんだけど、「毎日同じポーズを繰り返すこと、同じことを繰り返すことによって、磨かれるのです」みたいなことを仰っていたが、言葉も文章も、同じことを繰り返すことで、少しずつ磨かれ、洗練されてゆくものなのかもしれない。
99回目では響かなかった人も、100回目で響くことがあるかもしれないし、繰り返すことで自分自身が成長することだって多いのだ。
記:2008/11/29