コルトレーン vs. 熱血ドラム
重力開放空間上での一騎打ちバトル
ジョン・コルトレーンのテナーサックスと、エルヴィン・ジョーンズのドラムの一騎打ちが大好きなんですよ。
コルトレーンのキャリア後期の作品になると、演奏の後半になるとテナーサックスとドラムのデュオ、つまり「コルトレーン対ドラム奏者」の一騎打ちになる演奏が時々あります。
たとえば『トランジション』の演奏後半。
ピアノのマッコイが抜けます。
次いで、ベースのジミー・ギャリソンが抜けます。
結果、トレーンとエルヴィンだけになります。
このピアノが抜け、ベースが抜け……の状態は、まるで、サターン・ロケットやスペースシャトルの打ち上げのようです。
第一ロケットが切り離される。
第二ロケットが切り離される。
次第に演奏も無重力圏に突入していき、そして、大気圏外に打ち上げられたエルヴィンとコルトレーンが、宇宙空間でバトル!
そんな感じがするんですよ。
無重力空間ゆえに、重力の制約を受けないぶん、演奏もさらに過激かつエキサイティングになり、興奮に次ぐ興奮!
そんな流れが形成されるのです。
トランジション以外にも、あるいはエルヴィン以外にも、たとえば、『ライヴ・アット・ニューポート』の《インプレッションズ》では、ロイ・ヘインズとコルトレーンが
ドラム vs サックス でバトっています。
My Favorite Things: Coltrane at Newport
もちろん、この演奏もエキサイティング。
興奮しすぎて、飛び出した鼻血が止まらんほどです。
コルトレーンにとって、ドラマーは自分の背中をビシバシ叩いてくれることによって、
集中力と瞬発力をアップさせるための役割だったのかもしれませんね。
晩年は、ラシッド・アリと、完全に最初から最後までサックスとドラムだけの演奏の
『インターステラー・スペース』を録音していますしね。
ドラム大好きサックス奏者だったんでしょうね、コルトレーンは。
コルトレーンのアドリブ。
曲線的か、直線的か、2つのうちの一つを選べといわれれば、直線的といえるでしょう。
というより、直球一直線!って感じ?
だからこそ、定型なシンバルレガートを刻まないタイプのドラマー、そう、まさにエルヴィン・ジョーンズやロイ・ヘインズ、それにラシッド・アリが一直線に進んでいくトレーンのブロウに、ランダムな揺らぎをもたらし、よいアクセント、メリハリとして機能していたに違いありません。
記:2015/08/02