アンダーカレント/ケニー・ドリュー
2022/08/07
もっともブルーノートらしいアルバム
ケニー・ドリューがリーダーアルバム、という冠よりは、もっともブルーノートらしいアルバムの1枚といった方が良いのではないだろうか。
力強いサウンドはもとより、肉厚かつ鉄壁なアンサンブル。
タフで辛口なテイスト、かつ「いぶし銀」の魅力。
そしてジャケットの色合いも写真も素晴らしい。
このアルバムを壁に立てかけながら大音量で再生すれば、もう部屋の中はジャズ喫茶色に染まる? ……あ、そういえば、これジャズ喫茶でかかっているの、あまり聴いたことないな。
私の記憶が正しければ、「いーぐる」でアルバイトをしていた20歳の頃に1回だけのような気がする(だから気になって急いでCDを購入した)。
内容はバツグンに良いのに忘れ去られた存在?
だとしたら、それはとても勿体ないことだ。
良いアルバムなのに
ことあるごとに、私は友人やネット上などで、このアルバムの良さを語っているような気がする。
しかし、反応は「言われてみれば、たしかにイイですね~」的な反応が多いような気がする。なんだか煮え切らないというか、身を乗り出して「おぉ、すげぇ!」という反応にお目にかかったことがない。
悔しいから、以前パーソナリティを務めていたラジオ番組でも「ケニー・ドリュー特集」を組み、このアルバムをかけた。
本当は、このアルバムの一曲目《アンダーカレント》を、もっと多くの人に聴いてもらいたいがゆえに「ケニー・ドリュー特集」を組んだようなものなんだけれど。
それでも、あまり反応が芳しくなかったような気がするのは、ひょっとして私の耳や感性がタコだから?(涙)
悔しいから、いま書いていて来月シンコーミュージックから発売予定のジャズ入門の本にも、このアルバムを初心者向けのアルバム紹介の欄にも取り上げました(笑)。
ハンク・モブレイのコーナーに、「もっともかっこよく、ハードボイルドなモブレイが聴けるアルバム」として。
かっこいいモブレイとハバード
そう、このアルバムに参加しているモブレイ、かっこいいのだ。
ハードボイルドチックでカッコいいモブレイといえば、同じくブルーノートから出ている『ノー・ルーム・フォー・スクエアーズ』と、この『アンダーカレント』だろう。
いつものマイルドで穏やかな語り口とは少々雰囲気が異なる新しいアドリブの切り口が散見されるところも両アルバムの魅力でもある。
『アンダーカレント』においては、特にタイトル曲でのモブレイの奮戦ぶりが凄い。
速いテンポということもあり、ミドルテンポでみられるメロディアスなフレーズとは一線を画した、どちらかというとモードジャズのアドリブで散見されるアプローチも顔を出している点においても、従来のモブレイとは違う「新鮮な」モブレイを確認することができるのだ。
もちろん「輝ける一撃」をラッパで放つフレディ・ハバードも素晴らしく、モブレイとは良い対比をなしている。
グルーヴィン・ザ・ブルース
タイトル曲の《アンダーカレント》がこのアルバムの目玉であることには変わりはないが、他にも重くてコクのあるナンバーが満載だ。
《ライオンズ・デン》や《グルーヴィン・ザ・ブルース》がオススメで、辛口かつブルージーなムードをたっぷりとたたえており、聴いていると身が引き締まる思いだ。
特にFのマイナーブルースの《グルーヴィン・ザ・ブルース》の重たい感じが大好きで、学生の頃はライヴで演奏したこともあるほどだ。
考えてみれば、ベースのサム・ジョーンズと、ドラムスのルイス・ヘイズは、キャノンボール・アダレイ・クインテットのリズム隊だった。
《グルーヴィン・ザ・ブルース》のように重たいグルーヴから、《アンダーカレント》のようにスピード感と安定感が両立したリズムまで、彼らのコンビネーションは鉄壁だ。
彼らが繰り出すリズムだけでも、いや、これに絡むケニー・ドリューのピアノを含むリズムセクションを聴けるだけでも価値のあるアルバムといえよう。
後年、日本のレコード会社が制作したスタンダードばかりをピアノトリオで演奏しているドリューだけがケニー・ドリューではないのだよ。
記:2016/09/21
album data
UNDERCURRENT (Blue Note)
- Kenny Drew
1.Undercurrent
2.Funk-Cosity
3.Lion's Den
4.The Pot's On
5.Groovin' the Blues
6.Ballade
Kenny Drew(p)
Freddie Hubbard(tp)
Hank Mobley(ts)
Sam Jones(b)
Louis Hayes(ds)
1960/12/11