ザ・ユニーク/セロニアス・モンク

   

スタンダードがモンク流にメタモルフォーゼ!

「モンクがスタンダードを弾いたらこうなりました」というアルバム。

中身は、タイトルが雄弁に物語っていますね。

ザ・ユニーク。

まさに!です。

1955年、リヴァーサイドと契約したセロニアス・モンク。

リヴァーサイドの社長、オリン・キープニューズは考えた。

「このまま売り出しても、きっとそんなには売れないだろうな。」

よって彼が最初にモンクに依頼した仕事は、デューク・エリントン作品の録音。

次いで、有名なスタンダードナンバー集を作ること。

モンクのクセのあるオリジナルではなく、既存の有名ナンバーから、モンクの世界の門戸を広げてゆこうという戦略だ。

そのときのアルバムがコレ。

曲目を見れば分かるとおり、有名曲&スタンダード曲のオンパレードだ。

しかし、ここからがモンクの面白いところだが、既成曲を軽く超えて、ほとんどモンクが作曲したオリジナル曲なんじゃないか?と錯覚してしまうほどの演奏になってしまってるんですね。

《メモリーズ・オブ・ユー》のモンク流ハードボイルドに酔いしれ、モンク流の《ハニー・サックルローズ》は、聴くたびに私は大笑いしている。

《ダーン・ザット・ドリーム》しかり、《二人でお茶を》もしかり。

これらのスタンダード曲は、モンクの手にかかれば、おもちゃのようなものなのかもしれない。

そして、そんなおもちゃを楽しげに、愛しげに、転がしたりひっくり返したりしながら真剣に遊ぶモンクが、また良いのだ。

サポートも良い。

モンクの独特な間を埋めるアート・ブレイキーの力強いドラミングに、堅実に野太く“4つ”を刻むオスカー・ペティフォードのベースが頼もしい。

録音のせいなのかもしれないが、このアルバムのモンクのピアノの音色は、深い木の独特な味わいがある。

柔らかく、ちょっとコモり気味の音色は、まるで、磨き込まれた木の鈍いつや消しの味わい。

残響音がブライトで硬質なECMのピアノの音とは対極の音色といえる。

学生時代は、私がこのアルバムを好きだと分かっていた友人が、わざわざ家に準備しておいてくれて、私が彼の部屋に遊びに行くたびに、このアルバムをBGMでかけてくれたものだ。

懐かしいな。

柔らかなピアノの音色と、過激すぎないマイルドなモンク。

会話のBGMには最適だったし、いつも彼が炒れてくれたオリジナル・ブレンドのコーヒーがおいしかった。

もしかしたら、モンクの『ザ・ユニーク』には、珈琲をよりいっそう美味しくさせる効果があるのかもしれない。

記:2003/11/06

album data

THE UNIQUE (Riverside)
- Thelonious Monk

1.Liza (All the Clounds'll Roll Away)
2.Memories Of You
3.Honeysuckle Rose
4.Darn That Dream
5.Tea For Two
6.You Are Too Beautiful
7.Just You,Just Me

Thelonious Monk (p)
Oscar Pettiford (b)
Art Blakey (ds)

1956/03/17 & 04/03

 - ジャズ