アーバン・ブッシュメン/アート・アンサンブル・オブ・シカゴ
『フル・フォース』の次はコレ!
イキの良いアート・アンサンブル・オブ・シカゴ(以下A.E.O.C)の魅力を過不足なく、ダイジェスト的に味わえるとしたら、私は真っ先に『フル・フォース』をオススメしたいと思っている。
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しかし、『フル・フォース』を気に入った人が、もっとディープに、もっとお腹イッパイにもう、骨の髄までA.E.O.Cをたっぷりと堪能したいというのであれば、迷うことなく『アーバン・ブッシュメン』をオススメしたい。
限りなく、ピュアな音の洪水。
その洪水の中に浸り、気持ちよく泳ぐ。
メンバーの研ぎ澄まされたセンスによって、様々な音を巧みに奏で(しかも作為的なニュアンスを出さずに)、卓越したテクニックが太いウネリと、壮大な音のドラマを作り上げている。
あたかも自然発生的に。
音にひたれる
とにかく、音楽が自由。
とにかく、演奏はスポンティニアスで変幻自在。
そして、ひたすら気持ちが良い。
音の洪水、原始的な祝祭的雰囲気を持ちながらも、非常に知的に構築された音と音のバランス感覚。
勢い、漲る音のパワー。
このパワーの根底にあるのは、どこまでも陽性なパワーだ。
だから、聴く者を元気にしてくれる。
音に「ひたれる」という表現がこれほどシックリとくるアルバムも珍しい。
たっぷり2枚組。最初から最後まで、適度な緊張感と適度なリラックス感をキープしながら聴きとおすことの出来る、高密度音楽が『アーバン・ブッシュマン』だ。
レスター・ボウイのトランペット
3曲目の《サン・パーカッション・トゥ/テーマ・フォー・スコ》がオススメ。
サン・パーカッションといえば、ドラマーのドン・モイエは、自分のドラムセット(プラス、パーカッション)のことを「サン・パーカッション」と呼んでいるのだが、とにもかくにもこのパワー、この音の洪水、それでいて、賑やかなのにちっとも騒々しく感じないところはどうだ!
これぞ、A.E.O.Cの実力!
さらに2枚目の1曲目《ニューヨーク・イズ・フル・オブ・ソロー・ピープル》も素晴らしい。
レスター・ボーイの、物憂げだったり、思索深げだったり、哀しげだったりと、様々なニュアンスをトランペットの表情にこめた音は、深い。
原始と都市空間を矛盾なく行き来する、この不思議な情景描写よ。
もし、私が映像作家だったら、この曲を用いて映像クリップを作ってみたい。
50年代のニューヨークから、今日までのニューヨークの映像を集め、コラージュ的に人の表情、町並み、ビルなどをランダムに配置する。
スローモーションも多用して、すべてモノクロに統一する。
これのバックに、レスター・ボウイのトランペットをかぶせたい。
ニューヨークのまったく違う側面が浮かび上がってきそうな、意味ありげな映像の完成だ。
なーんてことを、この演奏を聴きながら夢想している私だった。
記:2014/02/14
album data
URBAN BUSHMEN (ECM)
- Art Encemble Of Chicago
1.Promenade: Cote Bamako I
2.Bush Magic
3.Urban Magic
4.Sun Precondition Two/Theme for Sco
5.New York Is Full of Lonely People
6.Ancestral Meditation
7.Uncle
8.Peter and Judith
9.Promenade: Cote Bamako II
10.Odwalla/Theme
Lester Bowie (tp,bass drum,long horn,vocals)
Malachi Favors Maghostut (b,per,melodica,vocals)
Joseph Jarman (saxophones,vocals,clarinets,bassoon,flutes,per)
Roscoe Mitchell (saxophones,fl,per,cl,vocals)
Don Moye (ds,vocals)
1980/05/05&06