『みんなちがって、みんなダメ』と 『最強の思考法 「抽象化する力」の講義』と『ジャズ・オブ・パラダイス』

   


みんなちがって、みんなダメ

大学教授が書いた興味深い2冊

最近読んだ本で面白かった本2冊。

それは、金子みすずの『みんなちがって、みんないい』、ではなくて、『みんなちがって、みんなダメ』(中田考)と、『最強の思考法 「抽象化する力」の講義』(的場昭弘)です。

この2冊に共通していることは、両著とも著者は大学教授であるという点。

これらの本の中で展開されている「考え方のベースのようなもの」は非常に参考になるし、「なるほど!」と頷けることも多いのは、さすが日々学生相手に講義を繰り返している先生ならではの説得力だと思います。

そして、日々学生たちを相手にしている現場の人だからこそ感じるであろう学生に対する失望や、そのような学生たちを量産してしまった現在の教育に対しての静かな怒りのようなものが垣間見えるところが興味深いですね。

もちろんダイレクトに記述されているわけではありません。

静かに滲み出ているところに、ある種の諦観のようなものも見え隠れしている。

そして、これはあくまで想像ですが、このような想いが、執筆の推進力にもなっているのかもしれないな、などと思いながら読ませてもらいました。

仮装敵がエネルギーの源

昔、私をジャズの道に引き込んだ強烈な一冊に、ジャズ喫茶「いーぐる」のマスター・後藤雅洋氏・著のの『ジャズ・オブ・パラダイス』という本があります。

ちなみに、私が手にしたのは、宝島バージョンのほうですが、現在は講談社の文庫バージョンが手に入れやすいのではないかと。



ジャズ・オブ・パラダイス―不滅の名盤303 (講談社プラスアルファ文庫)

これは、後藤雅洋氏の処女本でもあり、まだ40代だった頃の若かりし日のジャズ喫茶マスターの思いのたけが惜しげもなく注入された名著だと思います。

この本を今読み返してみると、後藤さんは怒っている。

常に行間からは怒りがにじみ出ている。

何に対しての怒りか。

それは、バカな客、バカな評論家、偽ジャズに盛り上がるバカな世間の風潮などなどです。

これらの「バカs」が後藤さんの執筆エンジンに薪をくべているかのごとくで、とにかく勢いと筆圧が凄い。

最近は、小学館から出ている『JAZZ VOCAL COLLECTION』や『JAZZ 絶対名曲コレクション』などで初心者に対しても優しく丁寧な解説をされている後藤さん。

しかし、最近の後藤さんの文章しか読んだことがない人からしてみれば、本当に同じ著者なのかと思うほど、攻撃的かつ挑発的なテキストです。

執筆時のエネルギーが活字となって封印されているため、読み返すたびに良い刺激となり、ダラけた己のマインドを叱咤してくれるのです。

やはり、「仮想的」のようなものは、執筆におけるエネルギー源なのかもしれませんね。

いや、それは必ずしも「敵」ではなくても良いのでしょう。

マイルスが自分の演奏スタイルとは正反対の表現様式の持ち主、ジョン・コルトレーンやウェイン・ショーターなどをサイドマンとして従え、相互刺激により演奏のクオリティを高めていったように、「異質なもの」を意識に据えることは、思わぬ創造性を発揮するのでしょう。

ライバルはいるか?
敵はいるか?
異質なる存在は身近にいるか?

いない人は、無理して作る必要はないとは思いますが、せめて本を読むなり、映画を観るなり、刺激の強いジャズなどを聴いたりすることで、自分の中の感性エンジンを磨きましょう。
日々、のんべんだらりとテレビばっかり見ていないで。

って、これ、半分以上今の自分に言っているようなもんですが。

記:2018/12/10

 

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