マイルスがオープンラッパで吹く《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》
マイルス・デイヴィスといえば、ミュートトランペット。
それも、キーン!と鋭い音色のハーマンミュートがトレードマークになっており、それはそれで確かにそうなのですが、しかし、だからといって「ミュートの人」というイメージで終わらせてしまうのは、あまりに勿体なさすぎる!
だって、マイルスのオープンで吹かれるトランペットだって、かなり良いですよ。
重たく鈍い、鉛色の味わい。
これと同じニュアンスを出せるトランペッターって、たぶん他に誰もいないんじゃないかと思います。
もちろん《テンパス・フュージット》のようなアップテンポのオープンラッパにも痺れますが、バラードも、それに負けず劣らずの表現力。
特に私はブルーノートにマイルスが吹き込んだ《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》が大好きです。
ミュートプレイのトレードマークとでもいうべき有名な演奏、《ラウンド・ミッドナイト》よりも大好き。
もちろん《ラウンド・ミッドナイト》も良いのですが、あのメリハリがありすぎるアレンジと表現は、慣れると、あざとさも感じてしまうこともあるんですよね。
ちょっと演出過剰というか。
それに比べれば、「ただ吹いている」だけな、若き日の《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》の方が断然良い。
素朴だけれども、深〜いのです。
記:2016/09/03