ワールド・ツアー/ザヴィヌル・シンジケート
ボナのベースにザヴィヌルの圧倒的世界観
ザヴィヌル・シンジケート、1997年の5月と11月に、ドイツでのライブを記録したものが、本アルバム、『ワールド・ツアー』だ。
まるで、万華鏡のような色彩感と、圧倒的なグルーヴ感に打ちのめされる。
まさに、音の魔術師ザヴィヌルの面目躍如。
と同時に、このバンドとしての一体感には目を見張るものがある。
特に、ベースのリチャード・ボナが大活躍。
ベースにしろ、民族色の強いヴォーカルも、少なくとも、ボナのソロ名義での演奏よりは、こちらのほうが良いと私は感じる。
くわえて、スケールの大きなリズムを放出するパコ・セリーのドラミングも凄い。
彼はアフリカの象牙海岸のアビジャン出身で、パリ在住のドラマー。
細やかなテクニック、サポートも際立つが、全体的に感じさせる、巨大な波のようにうねるリズム感覚と、レッドゾーンを軽く振りきったスピード感あふれるドラミングは、バンドのアンサンブルをより一層スケールの大きなものにしている。
まるでおとぎ話の世界にまぎれこんだように甘美でドリーミーなスローテンポから、一気に大興奮の高速ビートの演奏にチェンジする《スリー・ポストカーズ》が、個人的にはお気に入り。
アルバムの冒頭を優美に飾り、かつ、一気にザヴィヌルの世界に引きずりこむ役割を果たすこの曲は、まさにこのアルバムの顔といえるだろう。
また、アフリカの民族色の強いヴォーカルやカリンバに、ヴォコーダーを通したザヴィヌルのヴォーカルが絡む《ザンサ》の心地よさは、極上のリラクゼーションサウンドだ。
快楽、悦楽、スケールの大きなサウンドを圧倒的なボリュームで楽しめる、この『ワールド・ツアー』。
ザヴィヌルが生涯追求し続けたエスニックテイストのフュージョンサウンドの完成形をここに見る思いだ。
これを聴いた後にウェザー・リポートを聴くと、ウェザーの音が色褪せて感じてしまうほど、強力に充実した1枚だ。
クリーミーなサウンドが、エスニックなスパイスを加味され滑らかに疾走しまくる快楽をたっぷりと味わえる。
また、リチャード・ボナとヴィクター・ベイリーのベースを聴き比べる楽しみも。
記:2002/12/22
album data
disc 1
1. Patriots
2. Sunday Morning/Sunday Evening
3. Indiscretions
4. Asi Trabajamos
5. Bimoya
6. Zansa II
7. Bona Fortuna
8. N'awlins
disc 2
1. Lost Tribes
2. Three Postcards
3. Slivovitz Trail
4. When There Was Royalty
5. Success
6. Two Lines
7. Caribbean Anecdotes
8. Carnavalito
Joe Zawinul (key,vocooder,p)
Gary Paulson (g)
Victor Bailey (b)
Richard Bona (b,vocal)
Paco Sery (ds,kalimba,vo)
Manolo Badrena (per,vo,nolopipe)
1997/05月,11月