機動戦士Zガンダム1/2/長谷川裕一

   


機動戦士Zガンダム1/2

宇宙世紀の歴史ロマン?

絵のタッチは、『コミックボンボン』チックで、子ども向けなテイストが漂っているので好き嫌いは分かれるかもしれない。

また、『機動戦士Zガンダム』における「グリプス戦役」の裏面史的なエピソードが中止なので、大前提として宇宙世紀の「正史」である「一年戦争」と「グリプス戦役」の基本的な流れと最低限の知識は必要だろう。

ま、「一年戦争」の流れは無理して把握する必要はないけど、「ガンダム⇒すごいMS(モビルスーツ)だった」と、「アムロ・レイ⇒すごいパイロットだった」くらいな知識はベースに敷いておいたほうが良いよね。

基本、ショートエピソードの1話完結。

しかし、1冊通して、これらの話が、きちんと話がつながっていて、ストーリー構成の組み立ての巧さに唸る。

さらに宇宙世紀の「正史」の隙間をうまく突いていて、さらに、「本当のことかどうかは分からないけれど」的なサジェスチョンも入れることも忘れないという、なかなかよく出来たお話だと思う。

たとえば歴史好きが、邪馬台国はどこにあったのか?とか、徳川家康の影武者は何人いたのか?というようなことに想いをめぐらすことに近いロマンがあるよね。

なにげに面白く、よく練られている

最初のエピソードに登場する、ハーフガンダムを巧みに操るカン・ウーさん、いいよね。

名前の響きからは『装甲騎兵ボトムズ』の「クメン編」に登場するイヤな上官カン・ユーみたいだけれども、存在感と主人公に対するキャラ的役割は、ランバ・ラルでしょう。

そう、アムロに「僕はあの人に勝ちたい」と言わしめた、武人・ラルさんです。
こういうところも、本編と相似形となっていてなかなか面白い。

もっとも、カン・ウーさんの場合は、外見といい優しさといい、『エリア88』のグレッグを思い出しちゃったけどね。

戦場で酷使される中途半端な(?)ゼータガンダム(Zガンダム1/2)は、まるでリガズィの先駆けですな。
で、飛行ユニットがそのまま盾になり、その盾を振り回すための腕が発達しているというヘンなモビルスーツが活躍するエピソードが多いんだけど、こういう中途半端さが、かえって強敵をかく乱するというストーリーにつながるところも良いね。

ある時は地上で泥まみれ、ある時は宇宙空間でバウンドドッグを重ね合わせたモビルアーマーとの死闘。

そうそう、重ね合わせたバウンドドッグは、まるでバウンドドッグ・ダブル。
ダブル対ハーフという戦いの図式に持っていきたかったんだろうね。

このようなところにも、細やかなアイデアがちりばめられており、なかなかこのコミック1冊自体が、「よく出来た嘘の本」として楽しむことが出来る。

私の子どもっぽい感性にもビビッときた爽やかな感動が盛り込まれた秀作といえるでしょうし、そもそも「宇宙世紀」という架空の歴史にも、正史の隙間に思いを馳せるロマンの要素をも提示しているという意味では、殺伐かつトゲトゲとした「Z」の世界観よりも、個人的には好きかもしれない。

あ、あと「クロスボーン」が好きな人は、若かりし日のウモン爺さんも登場するのでお見逃しなく!

記:2019/05/18

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