アンルート/ジョン・スコフィールド

   

ベテランの余裕と風格

ベースとドラムを従えたシンプルなトリオ編成で、ジョンスコのギターがこれでもかというほど聴覚を挑発する。

スリル半分、リラックス半分。

この緩急が申し分なく、まるで、目の前でライブが行われているような臨場感を味わえる。

ベースのスティーヴ・スワロウとドラムのビル・スチュワートとのコンビネーションも抜群。それもそのはず、このライブがレコーディングされる前は、このトリオでヨーロッパのツアーを数年間続けていたのだ。
この一体感は、現場で鍛えたチームワークというわけだ。

また、緊密なアンサンブルでもあるが、ジャムセッション風の良い意味での緊張感と、心地よい弛緩もあるので、退屈する瞬間は1秒たりとも無いといっても良いほどの内容だ。

ジョンスコは、マイルスのバンドに在籍していたころのエッジの尖ったギターもカッコ良かったが、それにさらに表現に厚みが加わった感じ。

とにかく音のエッジの腰の据わり方には貫禄、いや貫禄どころか一段も二段も表現のスケールが大きくなった。

ベテランの余裕と風格が感じられるのだ。

テクニックと年季が良い意味で合体し、スケールアップをしたジョンスコのギターを心ゆくまで味わえるアルバムだ。

それにしても、スティーヴ・スワロウのベースの音色の暖かさはどうだ。
エレキベースでピック弾きなのに、まったくザクザクした音ではなく、まろやかで包容力のある音色を終始放射している。

タイム感覚も、イーヴンで心地の良い4ビートを刻む。

特に《ネーム・ザット・トルゥ》のようなハイ・スピードナンバーでは、まるで猛烈な勢いで地を這う低音。スリルを感じさせつつも、安定した疾走感でアンサンブルを牽引してゆく。

間違いなく、ワン・アンド・オンリーのスタイルを築き上げたベーシストといえよう。

この音源は、2003年、ニューヨークのブルーノートで行われたライヴだが、ここに居合わせた人をとても羨ましく感じる。

このメンバーで、是非日本にも来て欲しいものだ。

記:2005/01/25

album data

ENROUTE (Verve)
- John Scofield

1.Wee
2.Toogs
3.Name That Tune
4.Hammock Soliloquy
5.Bag
6.It Is Written
7.Alfie
8.Travel John
9.Over Big Top

John Scofield (g)
Steve Swallow (b)
Bill Stewart (ds)

Recorded live at The Blue Note,NYC
2003/12月

 - ジャズ