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text:高野雲

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戦術思想に疑問。「ガンダム0083」強襲揚陸艦アルビオン

      2017/05/30

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albion

強襲揚陸艦?

「ホワイト・ベース」を武骨にしたシルエットの「強襲揚陸艦アルビオン」はOVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場した艦艇だ。

主人公が搭乗するモビルスーツを運搬し、ほとんど艦隊行動を取らずに、単独で様々な戦線を渡り歩いたという点は、初代ガンダムの「ホワイト・ベース」に通ずるものがある。

ちなみにホワイト・ベースという艦の分類も強襲揚陸艦なのだそうだ。

ところで、アルビオンの頭の上にくっついている、「強襲揚陸艦」という、ただごとではなさそうな漢字の熟語は一体なんなのだろう?



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強襲揚陸艦とは?

強襲=猛烈な勢いで敵を攻撃すること。
揚陸=船の積荷を陸に運びあげること。船から上陸すること。

劇中では、荷物ではなく、モビルスーツを始めとした機動兵器のことを指すのだろう。

「強襲揚陸艦アルビオン」という船は、敵の拠点を「猛烈な勢いで攻撃」し、兵器(=モビルスーツ)を敵の拠点に「上陸」させることが役割の戦艦と推察される。

ということは、重武装で、多くの兵器を搭載している戦艦なのだろうな、と思うのも当然だろう。

ところが、 重武装な戦艦なのかと思いきや、意外とそうでもなく、主力兵器はメガ粒子砲が2本のみ。ミサイルや対空機銃といった細々とした武装は、あるにはあるが、「強襲」という言葉からは連想が出来ないほど、武装は貧弱だ。

さらに、多数のモビルスーツを搭載できるのかと思いきや、それほど多くの機数を搭載出来るスペースがあるとも思えない。
2小隊のモビルスーツの搭載が可能だそうだが、『機動戦士ガンダムMS第08小隊』に出てくる小隊は、モビルスーツ3機の編成だったから、 ガンダムの世界の1小隊はモビルスーツ3機と仮定すると、たったの6機しか搭載出来ないということになる。

たった2門のメガ粒子砲の艦砲射撃で敵の軍事拠点を「強襲」し、6機のモビルスーツを「揚陸」させるのがアルビオンという戦艦に与えられた本来の目的だとしたら、これはかなり無茶な話だと思う。

一般に、基地や島や要塞などの敵の軍事拠点を攻撃し、兵士を上陸させるには、莫大な火力と人員を集中的に投入し、想像を絶するほどの兵器と兵員の消耗を覚悟しなければならないからだ。

タラワの戦い

私が子供の頃、「レニングラード攻略」のウォーゲームに熱中したことがある。

このゲームで厄介なところは、戦力としては大したことのないロシアのゲリラ兵も、ひとたび要塞にたてこもれば、防御力が一気に5~10倍に増大し、圧倒的に火力が優勢なドイツの機甲師団を手こずらせることだ。

貧弱な兵力も、城や要塞や陣地のような拠点に立てこもれば、容易には切り崩せないという計算に乗っ取った設定なのだろうが、これを裏付けるような戦史は、それこそ枚挙にいとまがない。

一つだけ、過去に読んだことのある戦史から例をあげてみよう。
太平洋戦争中、米海兵隊からは「恐怖の島」と後々恐れられたギルバート諸島、キリバス共和国のタラワ環礁の戦闘だ。

米国としては、聞いたこともないような小さな島を占領するための戦闘だったはずだし、実際、日本軍の守備隊の兵力も大したことはなかったのだが、想像以上の激戦となり、3,000人以上の米軍の将兵が3日間の戦闘で戦死、または負傷した。ちなみに、日本軍4,700人に対して、米軍の投入兵力は17,000人だ。

3倍以上の兵力が、小さな島を攻略するのに3日の時間を要し、5分の1以上の兵力を消耗したわけだ。

この戦闘が教訓となり、後のガダルカナル島上陸や、沖縄上陸作戦においては、敵兵力の何倍もの量の兵力が投入されるようになった。
敵兵力のおよそ5~10倍近くの戦力を投入しないと、揚陸・占領・敵の逆占領の阻止が難しいという、大まかな作戦の見積もりは今や常識だ。

タラワ1943―形勢の転換点 (オスプレイ・ミリタリー・シリーズ―世界の戦場イラストレイテッド)タラワ1943―形勢の転換点 (オスプレイ・ミリタリー・シリーズ―世界の戦場イラストレイテッド)

「宇宙世紀」の強襲揚陸

複数の同型艦が相互に協力しながら、作戦行動を取るのならともかく、このアルビオンという戦艦は一隻しか存在しないようだし、たったの一隻で「強襲」と「揚陸」という二つの任務を成し遂げるには、それこそ強力な火力と、多くの投入する兵力(=モビルスーツ)を搭載出来るキャパがなければならないとはずだ。

ところが、アニメを観ている限りにおいては、上記2つの要素をどちらも満たしているとは考えがたい。

よって、「強襲揚陸艦アルビオン」の不幸は、本来の目的とはかけ離れたスペックの戦艦になってしまったことだと思う。

いや、もしかしたら、ガンダムの「宇宙世紀」という世界では「強襲揚陸」の概念が今とは違うのかもしれない。

たとえば、「敵陣奥深くまで単艦で突入し、ピンポイントで攻撃を行う」とか。だとしたら、ずいぶんと「運マカセ」の要素が強い戦術思想だと言わざるを得ない。ほとんど、特攻隊ではないか。

そして、もう一つの不幸は、ジオンの残党、ガトーらとの交戦により、本来の任務とは違う役割を最後まで担わされ、強襲でも揚陸でもなく、単独で個々の戦線を渡り歩く孤独な「運び屋さん」と化してしまったということで、二重に誤った運用方法を課せられてしまったということだろう。

もっとも、「強襲揚陸艦アルビオン」の「強襲揚陸艦」なる言葉、「なんとなく強そう」「ミリタリー心をくすぐりそう」「リアルだから」という単純な理由でつけられただけのような気がしないでもないが。

記:2001/07/14

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