ジ・イン・クラウド/ラムゼイ・ルイス
ピアノはわりとお上品なノリ
ワシントンD.C.のクラブ「ボヘミアン・キャヴァーンズ」で3日間に渡って行われたラムゼイ・ルイス・トリオのライブを記録したものだ。
臆面もなくノリノリなピアノを楽しめるライブ盤、と書きたいのだが……。
そして、多くのジャズ評論などを読むと、そのような記述が多いのだが、個人的な感想を言わせてもらうと、そんなにノリノリか?とも思う。
歌や管楽器の主旋律のない伴奏ピアノを延々と聞いているような気分にもなる。
リズム&ブルース、あるいは軽快なゴスペルを聴くような感覚ではあるが、元よりクラシックの教育を受け、大学でもみっちりとクラシックを学び、さらにシカゴ交響楽団とも共演歴のある彼のタッチは、どこか大人しいというか端正なところが感じられる。
しかし、勉強が出来る優等生が一生懸命不良仲間のテイストに合わせようと、泥臭く、ファンキーに演じたピアノが、「このあたり」のノリなんだろう。
この黒さは、たとえばホレス・シルヴァーのファンキーな黒さや、ボビー・ティモンズの粘る黒さとは本質的には異なる、自然に湧き出てくるものというよりは、学習した上での黒さ、ノリのようにも感じる。
この泥臭いニュアンスは、一般大衆好みの味覚にチューニングされたテイストに感じるのは私だけ?
だから、聴きやすい。
しかし、録音のせいもあるのかもしれないが、どこか遠くで演じられる他人事のようにも聞こえてしまう白々しさも感じられるんだよね。
多くの評論家が褒めそやすほど、そんなにノリノリの演奏なんでしょうか、《ジ・イン・クラウド》は?
たしかに観客の楽しげな反応は掛け声や手拍子でも分かるんだけど、あまりそのライブの臨場感はディスクからは伝わってこないんだよね。
しかし、このノリのよさと、キャッチーさが幸いしてか、タイトル曲の《ジ・イン・クラウド》は、当時は全米ビルボード・ホット・テンの6位にまで登りつめている。
まあ確かに心地よく、柔らかいノリではあるのだが。
「よし、聴くぞ!」と気合いを入れる必要など、さらさらない気軽に耳を通すことが出来るノリノリ&傑作のライブ盤であることは確かだが、ダニー・ハサウェイの『ライヴ!』などを聴いた耳からはお上品なノリのライヴに聴こえてしまうことも確か。
記:2010/09/05
album data
THE "IN" CROWD (MCA)
- Ramsey Lewis
1.The "In" Crowd
2.Since I Fell For You
3.The Tennessee Waltz
4.You Been Talkin' 'Bout Me, Baby
5.Theme From Spartacus
6.Felicidade (Happiness)
7.Come Sunday
Ramsey Lewis(p)
Eldee Young(b,cello)
Red Holt(ds)
1965/05/13-15