ヴィレッジ・ヴァンガードの夜/ソニー・ロリンズ

   

個人的ベストアルバム!

個人的には、ロリンズのアルバムの中ではもっとも好きなアルバムがコレだ。

私はながらく、別テイクも含めて2枚にわかれてライブの模様が収録されていた輸入盤のVol.1とVol.2の2枚を愛聴していたが、ブルーノートの人気盤 50枚が、一律1100円で再発されたので、またまた買ってしまった。

耳に馴染んだ演奏も、曲順が違うと、また違った流れ、違ったアルバムとしての表情をおびてくるからね。

もちろん、最初からこのアルバムは大好きなアルバムだったわけではない。

正直に告白してしまうと、最初はこのアルバムがさっぱり理解できなかった。

ピアノのいない、ピアノレストリオ(サックス+ドラム+ベース)という“通 ”な編成だったことが大きいが、ジャズを聴き始めの頃の私にとっては、このアルバムの演奏のおいしいところを捉えられなかったのだ。

分からないから聴きまくっていた時期がある

「音楽」として聴くのではなく「演奏」として聴く。

アレンジや完成度を聴くのではなく、「迫力」を堪能し、「出来事」を想像力を働かせて追体験してみる。

このような聴き方が出来るようになったのは随分と後のことだった。

なにしろ、
分からない→悔しい→理解してやる!モードだった私は、学生の頃、アメリカに2週間遊びに行っている間は、ずっとこればかりウォークマンで聴いていたぐらいだから(小休止として『ミントン・ハウスのチャーリ・クリスチャン』を挟んで聴いていたが、こちらはスッと体内に染み込んできた)。

このアメリカでの「下地体験」が有効だったかどうか分からない。

むしろ、集中して同じものばかりを聴きこむよりも、広く浅くジャズを聴いた量に比例して、理解度、楽しみ度が増してきたように思う。

たとえば、他の人が演奏する《チュニジアの夜》だったり《朝日のようにさわやかに》を聴き、脳のメモリーの中が徐々にストックが貯まってゆくにつれて、次第にこのアルバムの中におけるロリンズの歌いまわしの凄さや面白さ、音そのものの迫力が自然に味わえるようになってきたのだ。

いきなり、テーマもそこそこ、アドリヴの真剣勝負に突入する白熱の演奏を初心者に分かれというのも、無謀な話なのかもしれない。

そういった意味では、このアルバムは上級者向けのアルバムといえるかもしれない(べつに入門・中級・上級と厳密に区分しているわけではないが)。

ただ、この演奏を楽しむためのとっかりのポイントはいくつかある。

音そのものの迫力に溺れることだ。

ボリュームは大きければ大きいほど良いが、耳が壊れない程度の音量でかまわない。

ヘッドフォンでも、スピーカーでもいいから、デカい音で聴けば聴くほど凄さが体感できることと思う。

金属が悲鳴を上げるシンバルの音。

岩と岩がゴツンとぶつかるような固いベース音。←これがカナメ!

唾が飛び散るんじゃないかと思わせるぐらい熱演のロリンズの太い太いテナー。

無理してメロディーを追ったり、リズムに体を慣らそうとする必要はない。

まずは、たった3人によって作り出された圧倒的にパワフルな音空間に身をさらしてみよう。

きっと、なにかが感じられるはず。

そうなればしめたもの。
このアルバムは、一生手放せなくなる。

ストライヴァーズ・ロウ

ちなみに、3曲目の《ストライヴァーズ・ロウ》に関して少し。

ジャズ・ジャーナリスト・小川隆夫氏の大作『ブルーノート大辞典 1500番台編』(東京キララ社)の352ページに、この曲の解説がある。

その一部を引用すると、

“ライナーノーツでレナード・フェザーが「馴染みのあるコード進行を基にしたソニー・ロリンズのオリジナル」と書いている。ところが浅学な筆者には思い当たる曲がない。いったいどの曲のコード進行を拝借したのだろう? セロニアス・モンクの《フォア・イン・ワン》に似たフレーズも出てくるのだが……。”

と記されているが、この演奏の土台となっているのは、チャーリー・パーカーの《コンファメーション》です。

ベースラインを追いかければ一発で分かる流れだと思うのだが、人によって聴くポイントが違うと、まったく感じ方が違うのだなと思った次第。

記:2008/07/11

album data

A NIGHT AT THE VILLAGE VANGUARD (Blue Note)
- Sonny Rollins

1.Old Devil Moon
2.Softly As In A Morning Surise
3.Striver's Low
4.Sonnymoon For Two
5.A Night In Tunisia
6.I Can't Get Started

Sonny Rollins (ts)
Wilbur Ware (b)
Donald Bailey (b)
Elvin Jones (ds)
Pete La Roca (ds)

1957/11/03

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 - ジャズ