モゲラ

      2024/02/24

S.H.モンスターアーツ MOGERAS.H.モンスターアーツ MOGERA

『ゴジラvsスペースゴジラ』という映画があった。

当時、私はこの映画を彼女と、つまり今の女房と観に行った記憶がある。

私が女房と一緒に観に行った映画といえば、『ペンタの空』とか『ゴジラvsメカゴジラ』などといった、要するに子供が喜ぶようなものしか思い出せない。

女房は、幼稚園時代には、マジンガーZの靴を履き、仮面ライダーの水筒を背負って遠足に行っていたくせに(ちなみ彼女は長女なのでお下がりではない)、なぜかウルトラマンやゴジラのような巨大モノの特撮はあまり好きじゃないようだ。

なのに、よくもまぁ私の趣味にあわせて映画に付き合ってくれたものだと思う。

というより、よくこんな私と結婚したな、と思う。

まぁ、それはいいとして。

なぜ、私が『ゴジラvsスペースゴジラ』を観たかったのかというと、モゲラを大画面で観たかったからなのだ。

なにせ、平成版ゴジラに登場するモゲラは、Gフォースがゴジラをやっつけるために作った最新兵器なのだ!

しかも、前年の映画で活躍したメカゴジラをさらに発展させた、万能戦闘用ロボットなのだ!

全長120mと、滅茶苦茶デカイのだ!

マジンガーのような型をした目玉からは、プラズマレーザーがピーッ!!と出るのだ!

さらに、お腹には強力なメーサーキャノン、ドリルのような腕からはスパイラルグレネードミサイルが発射されるのだ!

しかも、そのスパイラルグレネードミサイルは、スペースゴジラの肩にニョキッと生えている結晶を破壊したほど強力なのだ!

劇中では使用されたのかどうかウロ覚えだが、頭部の角にはゴジラ撹乱用ジャミングシステムも内蔵しているのだ!

しかも合体分離も出来るのだ!!

上半身は地底戦車ランドモゲラー、下半身は戦闘機スターファルコンになるのだ!

普通逆じゃないのか?というような役割分担(上半身が戦闘機、下半身が戦車というのが普通の発想ではないか?)もイカすのだ!

しかも、宇宙も飛行出来るのだ!

ついつい興奮して「のだ!」を連発してしまったが、それほどカッコいいロボットなのだ!

ということなのだ!

さすが、Gフォースの最新兵器なだけあって、フォルムは精悍で、カッコ良い。

ただし、ストレートにカッコ良いというわけではない。

ニュアンスを説明するのが難しいが、B級テイストなものを、無理矢理A級テイストにレベルアップしたつもりだけれども、その中にも、そこはかとなく漂うB級テイストがカッコ良いとでも言うのだろうか?

なんだか、ややこしいが。

そして、ヒーロー然としてカッコ良すぎるロボットよりも、ちょっとドン臭い要素が入り混じっていたほうが、私のメカ心がくすぐられるのだ。

このニュアンス、分からない人には分からないと思うが、ジャズに喩えれば、「ガトー・バルビエリ、結構好きです」と言うようなものなのかもしれない。

いや、「ドン・ウィルカーソンを好きなようなものです」といえば分かってもらえるかもしれないな。

え?わからない?

まぁ、それはいいとして。

このモゲラを操縦するのが、私が大好きな味のある役者、柄本明だというのだから、大画面で観たくなるのが人情というものだろう。

え?そんなことない?

まぁ、それはいいとして。

実際、モゲラはカッコよかった。

特に、オープニングのテスト飛行間近のシーンでは、格納庫で最終チェックを受けるモゲラの細部がドアップで映されるのだが、巨大メカが好きな人ならば、泣いて喜ぶようなシーンの連続だ。

しかも、格納庫の中のアナウンスは、全部英語。

空港の管制塔よろしく、冷静な英語のアナウンスが飛び交っている。

英語だからカッコイイというわけでもないのだが、リアルな感じをより一層際だたせていることは確かだ。

しかし!!

英語風のアクセントで、

「モッゲーラァ!!テイク・オーフッ!!」のアナウンス。

これには腰が砕けた。椅子からズリ落ちそうになった。

もっげぇらぁ??(笑)

な、なんてマヌケな名前なんだ、とほほほ。

と、何を今さら、当たり前なことに気がついた。

しかも、最新鋭で近代的な兵器だということをタップリと見せつけられた直後なだけに、この発音のマヌケさのギャップには凄まじいものがあった。

だって、さんざん格好いいロボットと、リアルなメカニックを見せつけられた直後に、
「タケコプター・フル・スロットル!! のびぃたぁ~、Go!!」って真面目な英語でアナウンスされれば、誰だってズッコケるでしょ。

ああ、モゲラはしょせんモゲラ。

どんなに格好よくバージョンアップされても、名前の響きのマヌケさが、すべてをダイナシにしているような気が…。

モゲラの正式名称は「Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type」。

これを無理矢理縮めて「MOGERA」という設定なのだが……。

どんなに、リアルな発進シーンや操縦席の描写をしても、しょせん、のび太はのび太なように、しょせんモゲラはモゲラ。

モッゲーラァ!!!

ああ、なんだか、この腰砕け度は、マイルス・デイビスやセシル・テイラーの日本公演のライブ盤の冒頭で耳にする大雑把な英語を聞いて、腰砕けな気分になったようだった。

で、肝心な映画の内容というのが……、まったく記憶に残っておりませんです、ハイ。

『ゴジラvsスペースゴジラ』といえば、モゲラに興奮し、モゲラにズッコケた映画だったとしか記憶されていないのです。

記:2002/01/10

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