『サブコンシャス・リー』は、生涯のベスト10に入りますね、きっと。
冷ややかな肌触りのジャズ
多くのジャズはエネルギッシュだし、熱いし、勢いに溢れている。
だから私はジャズが好きなんだろうし、浪人時代から飽きもせずにジャズを聴き続けているのだろう。
しかし、先述したジャズの大きな特徴とは正反対のことを言うが、私は、冷ややかな肌触りのジャズも好きだ。
私が、いちばん最初に、身体の芯から「くーっ、ジャズってすげぇ!」と感じたのが、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』だ。
もっとも、『カインド・オブ・ブルー』の場合は、冷ややかというよりはスタティック(静的)という印象だったが。
冷ややかであろうとスタティックであろうと、どうもジャズを聴く前はテクノポップを聴いていたこともあるせいか、ただ単に熱い演奏よりも、クールな眼差しが音楽に貫かれているジャズにたまらない魅力を感じてしまうのだ。
あ、もちろん、だからといって、熱いジャズが嫌いというわけではないので、念のため。
そんな私が、「ひぇぇ、クール!まいった!」と常々感じているのが、リー・コニッツの『サブコンシャス・リー』なのだ。
今でも「近未来」を感じる
斬れ味鋭いコニッツのアルトサックス。
イーブンで均等な刻みをストイックに続けるリズムセクション。
丸みを帯びた音色ながらも、尋常でない語尾の鋭さを発するコニッツの師匠、レニー・トリスターノのピアノ。
数回聴いただけでは、絶対に覚えられないほど複雑怪奇ながらも、機械仕掛けの歯車を見ているように恍惚とした気分にさせてくれるメロディライン。
いかん、どれをとっても完璧だ!
まるで、近未来のSFチックな、ものすごく先鋭的な音楽だが、これが録音されたのって、昭和20年代なんだよねー。
日本では美空ひばりなどが流行っていた頃に、アメリカの一部の先鋭的でアタマ良すぎる人たちが、こんなにヤバくてクールな実験をしていたという。
恐るべし!!!!!
4ビートという、ジャズの「様式」を借りつつも、行われている音楽行為は、すでに、ジャズとは別のあらたな次元を模索しているとすらいえる。
先鋭的、実験的、アヴァンギャルドが好きな私にとっては、今日でも、まだまだ新しさと未知なる発見のつきない、生涯のベスト10に確実にはいるアルバムが、リー・コニッツの『サブコンシャス・リー』なのです。
すぐに「理解しろ!」とは言わないし、すぐに良さが分かるほど甘い音楽でもない。
しかし、傍らに置き、思い出したように聴くことを何か月も続けていれば、ある日突然、その「凄い世界」が、パッと目の前に開けてくることは確実だ。
折に触れて聴いてみては如何?
記:1999/04/07