セロニアス・モンク: モダン・ジャズの高僧/KAWADE夢ムック 文藝別冊
再編集版登場
その昔、たしか1990年代初頭に講談社から書籍として『セロニアス・モンク—ラウンド・アバウト・ミッドナイト』というタイトルの書籍が出版されていました。
発売当時は夢中になって読んでいたものです。
なにせ、執筆陣(およびコメントおよび対談で喋る人)が、市川正二、今沢格、勝川史憲、加藤総夫、久保田晃弘、古今亭志ん朝、後藤誠、後藤雅洋、寒川光一郎、都並清史、寺島靖国、内藤遊人、みなみらんぼう、村井康司(敬称略・五十音順)と、今から見れば、いや当時からも、「その世界」では大物というか名が知れているというか、ジャズを多少嗜んでいる人であれば知らぬ者はいないというほどの猛者揃い(まぁ、一部、それには当てはまらない人もいますが)。
モンクの魅力を様々な角度から浮かび上がらせる、なかなかの良書でした。
その本の記事の一部が、河出書房新社により再集録され、ムックとして発売されていますね。
それがコレ。
当時読み逃した人、これからモンクに興味を持つ予定の人は、ぜひ手に取って読んでおくべきでしょう。
もちろん、「講談社本」の過去記事の再集録のみならず、他の雑誌に掲載された記事や、最近書かれた新しい記事も収録されてはいますので、なかなか立体感のある編集になっていると思います。
後藤 vs 加藤
個人的に面白かった、ジャズ喫茶「いーぐる」のマスター・後藤雅洋さんと、脳科学者の加藤総夫さんの対談も再集録されています。
緊迫感のある対談風景の写真がいくつか掲載されており、特にその中でも1ページまるごと後藤さんの写真がアップされていました。
しかし、ムック化にあたって、対談中の写真がカットされているのは残念ですが、「あの対談」を再読したいという人にはうってつけの本だと思います。
個人的にはこの対談、すごく興味があった。
「あの」後藤さんが珍しく押されているんですよね、加藤さんに。
今では、小学館から隔週で発売されているジャズの音源付きマガジンを監修&執筆され、日本ジャズ評論界の重鎮といっても過言ではない、あの後藤さんが、ですよ?!
▼好評の後藤さん監修の小学館「JAZZ VOCAL COLLECTION」隔週刊CDつきマガジン 「ジャズ・ヴォーカル・コレクション」ガーシュウィン・セレクション
参考になる加藤総夫氏の論考
1980年代後半から90年だ前半までは加藤総夫氏、ジャズ評論の書籍などにたびたび登場して、独自の視点から鋭いことを述べられていたんだけど(特に、私のエリック・ドルフィー観は氏の影響を濃厚に受けている)、そしてご自身も著書『ジャズ・ストレート・アヘッド』や『ジャズ最後の日』をお書きになられた上に、ご自身の専門分野である「脳」を面白がる本『脳天記』をお書きになられていて(全部読みました)結構注目していたんだけれども、最近はとんとお見かけいたしませんね。
本職のお仕事(東京慈恵会医科大学)のほうに忙しいんでしょうかね。
たまには、ジャズ雑誌などに寄稿していただき、鋭くかつ目からウロコの意見を放っていただきたいと思っています。
「モンク好き」さん、増えてくれ!
そう、だから加藤さんと後藤さんの対談を読めるだけでも、この本は「買い!」なのです。
今では、小学館の緊迫感ある後藤さんのポートレイトが片側ページ全部にドカーン!と配されている大胆なレイアウトになっていないのは残念だけれども。
でも、本全体のトータルなビジュアルやイメージよりも、とにもかくにも活字の内容重視じゃ~!という方、面白いコンテンツが充実しているので(というよりも、モンクの存在そのものが面白いのでしょうね)、ぜひ読んでみておくんなさいませ。
で、これを読んでますますモンクに興味を持った方は、このサイト「カフェモンマルトル」に私が書いているモンク関係の記事を読んでいただけると嬉しいです。
私もモンクは大好きです。
そして、モンクを愉しみ、モンクについて色々考え、モンクについて色々と書いているので、皆さんと「モンクが好きだ!」な気持ちを共有したいのです。
記:2018/01/01