ムーヴィン・アンド・グルーヴィン/ホレス・パーラン

      2022/08/06

『アス・スリー』だけではない。

ホレス・パーラン、ブルーノートといえば、多くの方は、真っ先に『アス・スリー』を思い浮かべるのではないだろうか。

私もそうだし、『アス・スリー』は、ホレス・パーランを代表する素晴らしいピアノトリオのアルバムだと思っている。

関連記事:アス・スリー/ホレス・パーラン

しかし、もう1枚、忘れてはいけないアルバムがある。

彼の初リーダー作『ムーヴィン・アンド・グルーヴィン』だ。

29歳のときのリーダー作。
そして、録音された日も2月29日。

セットで覚えやすいですね。

スタンダード固め

『アス・スリー』が、パーランが得意とする土俵の上での最上のプレゼンテーションだとすると、こちらの『ムーヴィン・アンド・グルーヴィン』は、スタンダードを題材に、彼の独特な奏法と陰影に富んだピアニズムを遺憾なく発揮しているアルバムといえる。

パーランの自作曲は1曲しかなく、残りは誰もが耳にしたことがあるはずのスタンダードナンバーばかりだ。

しかし、聴こえてくる音は、まるでパーランのオリジナルナンバーであるかの如く響く。

Cジャム・ブルース

冒頭の《Cジャム・ブルース》は、有名なレッド・ガーランドの『グルーヴィ』の演奏と聴き比べてみると面白いと思う。

>>グルーヴィ/レッド・ガーランド

軽快に繰り広げられるガーランドのバージョンは、晴れた休日の昼下がりだとすると、パーランのバージョンは、まるで陰鬱な曇り空のようだ。

重い。
そしてダーク。
しかし、だから良い。

もちろん、ガーランドのバージョンは、ポール・チェンバースのベース名演奏曲でもあると私は考えているので、素晴らしい演奏だ。

参考記事:チェンバースの「ベース名盤」!レッド・ガーランドの『グルーヴィ』

しかし、パーラン&サム・ジョーンズコンビも、これに負けず劣らずの名演奏だ。
しかも、ガーランド&チェンバースコンビとは、まったく異なるテイストを発しているところが興味深い。

テーマのメロディがシンプルだからこそ、かえってそれぞれのピアニストの個性がきわだつのだろう。

チェンバースの低音がグイグイ演奏を牽引するレッド・ガーランドのバージョンも良いが、ガッシリと力強い屋台骨を形成しているサム・ジョーンズのベースも、これまた味わい深いベースだと思う。

オーソドックスなベースラインだからこそ、さらに黒光りする味わいをみせるサム・ジョーンズのソウルフルなベースも楽しめる演奏だと思う。

濃コクな味わい

1曲目の《Cジャム・ブルース》から、グイッと濃コクな味わいのある世界に誘引されてしまうのだから、後の演奏はもう推して知るべし。

いやはや、まいったまいった、こんなに鈍くて重厚な黒光りを放っていいんですか、パーラン先生?!って感じでございます。

もちろん、パーランの必殺「3連リピート」も、初リーダーの時点から健在。

パーラン好きにとっては、やめられない止まらない、クセになってしまう味わい深いピアノトリオなのだ。

記:2019/02/27

album data

MOVIN' AND GROOVIN'(Blue Note)
- Horace Parlan

1.C Jam Blues
2.On Green Dolphin Street3.Up in Cynthia's Room
4.Lady Bird
5.Bags' Groove
6.Stella By Starlight
7.There Is No Greater Love
8.It Could Happen to You

Horace Parlan (p)
Sam Jones (b)
Al Harewood (ds)

1960/02/29

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