ナウズ・ザ・タイム/リチャード・デイヴィス
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滲み出る低音の存在感
1972年にクラブ「ジャズ・シティ」で行われた演奏が収録された『ナウズ・ザ・タイム』。
曲目は2曲のみ。
いずれも22分を越す長尺演奏で、レコードだと、それぞれの曲が片面を占める。
CDだとボーナストラックも入っているけれども。
収録曲は《ナウズ・ザ・タイム》と《エピストロフィ》。
ビバップお馴染みのナンバー2曲で、ジャムセッションでもよく遡上に載せられることの多いナンバーであることや、ライヴの演奏であることからも、冗長なジャムセッション的無駄な長尺演奏なのではないかとマイナスの期待をしてしまうかもしれないが、そんなことはまったく無い。
熱い。
こんなに熱くても良いの?って心配になるほどに熱い。
まずはクリフォード・ジョーダンのテナーサックの熱さにしびれる。
最初はジョーヘン(ジョー・ヘンダーソン)が吹いているのかと勘違いしたほど。
メロディアスなプレイで小気味の良いフレージングが印象的なクリフォード・ジョーダンが、とにかく奔放なブローをしている。
次いで、マーヴィン・ピーターソンのトランペットが、それに輪をかけたかのような熱さ。
ハード、勢いにあふれている。
この熱に浮かれたような熱いブロウを繰り広げる2人のホーン奏者を焚きつけているのが、リーダーであり蠢く鼓動をドクドクと発し続けるリチャード・デイヴィスだと気付くには、さほど時間がかからないだろう。
これから初めて聴くという方には、まずは2曲目の《ナウズ・ザ・タイム》から聴くことをお勧めしたい。
オーソドックスに熱いからだ。
1曲目の《エピストロフィ》は、《ナウズ・ザ・タイム》に比べると、ちょっと変化球度が高い感じがする。
もちろん、フリージャズや、それに類する激しい演奏が好きな人であれば、まったく問題ないのだが、ジョー・ボナーのピアノが暴れる《エピストロフィ》は、フリー・ジャズ一歩手前の演奏だ。
しかし面白いことに、ピアノが演奏の中心軸から逸脱すればするほど、変わることなく脈動を送り続けているリチャード・デイヴィスのベースの低音に魅了されることだろう。
やはりベーシストがリーダーの作品なだけのことはある。
低音の上に乗って他の楽器奏者が暴れれば暴れるほど、かえってベースの存在感が力強く滲み出るという面白いアルバムなのだ。
記:2019/10/27
album data
NOW'S THE TIME (Muse)
- Richard Davis
1.Epistrophy
2.Now's The Time
Richard Davis (bass)
Marvin Peterson (trumpet)
Joe Bonner (piano)
Clifford Jordan (tenor saxophone)
Freddie Waits (drums)
1972/09/07
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