『ア・ブローイング・セッション』のリー・モーガン

   

ライヴではなく後世に残る「音源」ならではの人選

テナーサックス奏者3人によるテナーバトル、ジョニー・グリフィンの『ア・ブローイング・セッション』。

一応は「テナーバトル」という触れ込みなんですが、「単なるバトルものとしてではなく、きちんと音楽としても聴ける作品にしよう!」という意気込みが感じられるところが、流石ブルーノートですね。

グリフィン、モブレイ、コルトレーンの3人を単にバトルさせるだけだったら、テナーサックス奏者を順番に吹かせればいいだけの話なんですが、視覚的要素も伴うライブではそれでもイイんでしょうけど、アルバムという作品でそのような内容にしてしまうと、きっとリスナーが飽きるのも早いと思うんですよね。

だから。

単に「テナーサックスのアドリブの比較」という目線だけではなく、「音楽的にも楽しめる内容」という目線も挿入したところが、さすがアルフレッド・ライオンだと思いますね。

要するに、トランぺッターのリー・モーガンをテナー奏者のソロの合間に挟んだ、ということなのでしょう。

テナー奏者とテナー奏者のソロオーダーの間の箸休め。

熱いテナーバトルの合間に、トランペットソロでちょっとブレイク。

リー・モーガンを配役の意図はそういう考えだったのかもしれないけど、やんちゃ坊主のリー・モーガンのこと、そんな端役に甘んじるはずもなく。

じつは、一番印象に残るソロをとっていたりするのが、リー・モーガンだったりするんですよね。

なんかテナーサックスの3人が、中低音でモゴモゴやっている合間に、リー・モーガンは、高域の通るラッパの音で、パララッ!とおいしいところをさらっていく。

リーダーはテナーサックスのグリフィンだし、テナーサックスを中心に聴く人が多いだろうと予想されるなか、ちゃっかり、エキストラ(?)のトランペットがいちばん目立っちゃっている。

「漁夫の利」ってそういうこと?

もちろん、グリフィンもモブレイもコルトレーンも良いテナーサックスソロとっていますよ。

モブレイは周囲に合わせようと少し焦っているのか本来の持ち味を出し切ってないような気がしてちょっぴりかわいそうだけど。

でも、テナーがブリブリとやっている中、印象に残るメロディアスなフレーズをサラリと吹いて空気を変えちゃうリー・モーガンの存在感のほうが最近は面白くて興味深いですね。

これは、コルトレーンがリーダーの《ブルー・トレイン》にもまったく同じことが言えます。

リー・モーガンといえば、代表作とされる『ザ・サイドワインダー』の人なのかもしれないけど、私は彼がリーダーの作品よりも、サイドマンとして参加してキラリと光る存在感を放つこのような作品のほうが好きですね。

記:2014/09/30

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