10分で分かるブルーノート
「●分で分かる」タイトルの本が多い
なんだか最近書店の店頭には、「5分で分かる○△×」とか、「サルでも分かる」とか「1時間でなんとか」とかといったタイトルの書籍が多い。
初心者に対する間口の広さと、敷居の低さをアピールする有効なマクラなんだろうけども、サルとか犬のような動物にも分かるもんなのかねぇ、実際に実験したんだろうな?おい、こら。
なんて野暮な突っ込みは抜きにして、だったら、私も真似して書いてみよっと。
5分で分かるブルーノート。
いや、ゆっくり読んでもらったほうがイイから、10分で分かるブルーノートにしておこう。
有名ジャケット
さて、
ブルーノートなしにジャズは語れないと言っても過言ではない。
なぜなら、40年代から60年代のジャズシーンは、このレーベルの音源を聴けばある程度俯瞰できてしまうほど、シーンの中心に位置したレーベルだからだ。
ハイヒールを履いた女性の足がクローズアップされたジャケットの『クール・ストラッティン』(ソニー・クラーク)。
蝶ネクタイを締めたアート・ブレイキーの顔がドアップのド迫力ジャケットの『モーニン』。
ほの暗き青の色調の中、ピアノを一心に弾くバド・パウエルと、横から浮かんでくる息子の顔。
《クレオパトラの夢》で有名な『ジ・アメイシング・バド・パウエルvol.5 ザ・シーン・チエンジズ』だ。
聴いたことがなくても、これらジャケットのビジュアルだけは浮かんでくる人も多いことだろう。
これらは全部ブルーノートのアルバムだ。
ブルーノートの魅力と功績
さて、そんなブルーノートの魅力は、いったいなんなのだろう?
ほかのレーベルとはどこが違うのだろう?
うーん、難しい。
なかなか一言ではいえない。
でも、敢えて無理矢理一言にすると、「ジャズのいちばんおいしいところを、非常に高いクオリティで商品レコード、CD)」したレーベルだということは言えると思う。
ジャズの持つ格好良さ、雰囲気を最良の型で、サウンドとパッケージに封じ込め、他のレーベルには見られない、安定したジャズのサウンドをリスナーに提供したレーベルなのだ。
また、ファンキージャズ、モードジャズ、フリージャズ、ソウルジャズなど、時代の流れを敏感に汲み取ったジャズをいちはやく取り入れ、世に紹介し続けたのもこのレーベルの功績だ。
無名の新人でも、実力があると見込んだジャズマンには積極的にレコーディングの機会を与え、多くのジャズジャイアントを育て上げたのもブルーノートだ。
セロニアス・モンクに最初のレコーディングのチャンスを与えたのもブルーノートだったし。
迫力あるサウンドでジャズのエネルギーを封じ込めた「音の良さ」もこのレーベルの特色といえる。
「ブルーノートに駄盤なし」という言葉もあるぐらい、このレーベルへの信頼感や人気は群を抜いていおり、初心者からマニアまで、多くのジャズファンがこのレーベルに魅せられ、今日まで聴きつがれているのだ。
社長はドイツ人
アメリカで生まれたジャズを代表するレーベル・ブルーノートだが、社長は、じつはドイツ人。
ちなみに、ECM、エンヤ、FMPといったレーベルもドイツ人オーナーだ。
面白いことに、これらのレーベルのどれもが良質のジャズを我々リスナーに提供しているんだよね。
彼らにとってジャズは異文化の音楽。
だからこそ、かえって本国よりも、外側から俯瞰できる立場からのほうが、客観的にジャズの魅力を的確に伝えられるのかもしれない。
それに、ドイツ人特有のコダワリも商品化の際にうまく働いているのかもしれない。
ECMのマンフレート・アイヒャーも別な意味で、滅茶苦茶こだわりの人だからね。コダワリというよりは完璧主義者。ゲルマンの血のなせる業なのかもしれない。
ブルーノートのオーナーの名は、アルフレッド・ライオン。
彼は1908年、ベルリンに生まれる。
幼少時より、ジャズのリズムに魅せられ、熱心なジャズレコードのコレクターだった。
彼は19歳のときに、ニューヨークにやってくる。
到着早々、港湾労働の職につくかたわら、ジャズクラブに出入りをしたり、レコードを収集していた。
しかし、2年後のある日、彼は、外国人に職を奪われたことに腹を立てた連中から暴行を受け、本国に強制送還されてしまう。
しかし、1937年に彼は再びニューヨークの土を踏む。
今度は移住です。
この背景には、ヒトラー台頭によるナチズム拡大が無関係ではない。
移住先のアパートはジャズクラブに近い7番街235番地。
ここが、後年ブルーノートのオフィスとなったわけだ。
ブルーノートの重要人物
ここから先の話は、またいずれ機会があれば書くとして、ブルーノートを語る上で、重要な人物書いてみよう。
一人は、カメラマンのフランシス・ウルフ。
彼もドイツ人で、ベルリン時代からのライオンの友人だ。
もう一人は、リード・マイルスというデザイナー。
彼はシカゴ生まれのアメリカ人。
ブルーノートのジャケットデザインは、彼の手によるものだ。
そして最後に、ルディ・ヴァン・ゲルダー。
録音技師だ。
彼の技術なくしてブルーノートの迫力あるサウンドは語れない。
ライオン、ウルフ、マイルス、ヴァン・ゲルダー。
この4人の才能が結集して生み出された奇蹟が、ブルーノートといえる。
もちろん、主人公は演奏するジャズマンだが、彼らに最大級の敬意を払い、リハーサルにもお金を払い、スタジオには食事をたっぷりと用意し、ジャズマンが気持ちよく演奏出来る環境を整えたのも、ブルーノートならではの工夫。
だからいつしか、ジャズマンの間では、ブルーノート、いやアルフレッド・ライオンは信頼と尊敬を集めるレーベルオーナーとなっていったのだ。
おすすめブルーノート本
と、超駆け足で、ブルーノートの紹介をしたが、これを機にこのレーベルに興味をもたれ、さらにブルーノートを探求したいという方のために、何冊かの書籍を紹介したいと思いう。
まずはなんといっても、油井正一・著の『ブルーノート・JAZZストーリー』(新潮文庫)だろう。
ブルーノートの入門としてはもっとも相応しい本だと思う。
歴史とジャズマンの紹介が非常にバランスよくまとめられた本でして、かくいう私自身もこの本でブルーノートに興味を持った思い出の本だ。
さらに詳しく知りたい方は、小川隆夫『ブルーノートの真実』(東京キララ社/三一書房)が良いだろう。
ボリュームたっぷりの内容だが、非常にスッキリと読みやすい内容になっている。
また、中山康樹の『スイングジャーナル青春録(東京編)』の後半にも、来日したアルフレッド・ライオンの模様が詳細に描かれており、このあたりのエピソードは涙無しには読めない。
と、まぁ、東芝EMIからは1500円という廉価で大量なブルーノートのCDも出回っていることだし、長い人生の一ヶ月から半年ぐらいは、音・知識ともにブルーノート漬けになって、身も心もブルーノートになっちゃうのも悪いことではないと思う。
というか、きっと、センスがツーランクぐらいアップしているかもしれない。
様々な角度から学べることが多い、多すぎなレーベルだからね。
かくいう私も、大学生のときは、部屋中にブルーノートのジャケットをペタペタと部屋中に貼りまくって、かける音はもちろんブルーノートのみ、という生活をしばらく送ったことがあるが、ごらんのとおり (ごらんになれないか)、ブルーな人間になってしまいました。
言ってることが「青」臭いだけ、とも言われますが……。
記:2005/11/03
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