ボトムズ・アップ/ヴィクター・ベイリー

      2019/07/26

Bottom's Up

派手さはないが、堅実でゴキゲン

エレクトリック・ベーシスト、ヴィクター・ベイリーのソロアルバム、『ボトムズ・アップ』をたまに聴く。

彼は、ジャコ脱退後のウェザーリポートのベーシスト。

ジャコのようは派手さ、トリッキーさ、華などはなかったが、堅実にウェザーのボトムを支えていたベーシストだ。

ジャコとは違い、彼はフレッテッドのエレクトリックベースを弾く。

フレット付きならではの、パンチとアタックのある音、そして、ベイリーならではの温かい音色と、滑らかでゴキゲンなノリが生かされたアルバムが、『ボトムズ・アップ』だ。

確かなテクニック

1弦と4弦を同時にピッキングし、10th(10度)の響きを印象的かつ効果的に用いた、《キッド・ロジック》。

なかなかキャッチーな曲想と、ノリの良いベースプレイだ。

さらに、《ラウンド・ミッドナイト》は、ハイポジションでの比較的原曲のメロディに則ったな演奏、などなど、特にトリッキーなことをやらずに、ストレートに芯の太いベースの直球勝負な演奏が多いが、このキャッチーさは、簡単なことをやっているからではなく、その裏には、かなり綿密な計算と、確かな技術によって裏打ちされているものだということは、ちょっとベースをかじった人には誰もが身にしみて分かることだろう。

この滑らかさ、なかなか難しい

このアルバムの「顔」とでもいうべき、《キッド・ロジック》。

これは、その昔『ベースマガジン』にも採譜され、私も取り組んでみたことがあるが、簡単なようでいてなかなか難しい。

ひとつに、一音一音を正確な音価で出せるだけの基礎中の基礎がおろそかになっている人は、一生かかっても、あのテンポの中での音の粒立ちをキープさせるのは難しいかもしれない。

くわえて、1弦と4弦を同時に鳴らす10度の和音も、相当なリズム感がないと、あのようなバネのある演奏はできない。

この一曲からだけでもヴィクター・ベイリーという人は、難解なことを平易に話すことが出来る優れた話術の持ち主だということが身をもって感じたものだ。

今は、中古盤でしか出回ってないようだが、マーカス・ミラーのコピーばかりに明け暮れているベース小僧には、是非、平易かつ明快な音に聴こえるかもしれないが、逆に平易かつ明快で滑らかな演奏をさらりとこなすことが難しいヴィクター・ベイリーのこのアルバムも、練習教材にどうですか?と薦めたくなってしまうのだ。

マーカスorジャコフリークのベーシストこそ、ヴィクター・ベイリーの基礎技術に驚嘆して欲しいと思う。

あ、マーカスといえば、2曲目のみだがベースで参加しているよ。

あ、それと、1曲のみだが、ウェイン・ショーターもソプラノサックスで、同様に1曲のみマイケル・ブレッカーもテナーサックスで参加している。

なにげに大物が参加している贅沢アルバムなのだ。

記:2010/04/13

album data

BOTTOM'S UP (Atlantic)
- Victor Bailey

1.Kid Logic
2.Joyce's Favorite
3.Miles Wows (Live)
4.Round Midnight
5.Bottom's Up
6.Hear The Design
7.In The Hat
8.For Wendell And Brenda

Victor Bailey (el-b,arr,ds programming,syn,vo)
Terence Blanchard (tp) #2,3
Wayne Shorter (ss) #3
Branford Marsalis (ss) #4
Donald Harrison (as) #3,6
Michael Brecker (ts) #1
Alex Foster (ts) #3
Bill Evans (ts) #7
Najee (ts) #5
Jim Beard (p,syn) #1,4,7
Richard Tee (org) #5
Clyde Criner (p,syn,sampler) #2,6
Jeff Watts (Snare, Hihat, Cymbal) #4
Wayne Krantz (g) #1
Kevin Eubanks (g) #2
Mike "Dino" Campbell (g) #3,5
Rodney Jones (g) #4
Jon Herington (g) #7
Marcus Miller (el-b) #2
Lonnie Plaxico (b) #4
Dennis Chambers (ds)#3
Omar Hakin (ds) #1,2,4
Richie Morales (ds) #7
Rodney Holmes (Hihat, Snare, Cymbal) #6
Mino Cinelu (per) #1,7
Steve Thornton (per) #4
Mark Ledford (vo,tp) #3
Clarence Robinson (voice,vo) #6

1989年

 - ジャズ