ザ・ジャッキー・バイアード・エクスペリエンス/ジャッキー・バイアード
バイアードの《メモリーズ・オブ・ユー》
先日、奄美大島で行った「第8回音聴き会~奄美にカークの花が咲く~」は大好評に終わりました。
大成功といっても良いんじゃないかな、というぐらいの充実した内容。ということで、取り急ぎ、来れなかったお客様にはご報告。
今回は、私一人が来訪されたお客様の前でジャズの聴きどころを解説するのではなく、奄美大島のCDショップ「サウンズパル」のtakara氏もパネリストとして参加していただき、解説はトークセッションに近い形で進行しました。
また、選曲も私とtakara氏が半分ずつ曲を持ち寄りました。
takara氏も私も、「カークで一番好きなアルバムは?」と問われれば、3秒の沈黙の後、2人で声を揃えて、「はい、『ヴォランティアード・スレイヴリー』です!」と応えるような人種なんですが、それ以外のアルバムの選曲は、2人の好みの違いが面白いように反映される結果となり、なかなか幅広い選曲内容になったと思います。
中でも、「ほぉ」と思ったのが、takara氏が選曲した《メモリーズ・オブ・ユー》。
これは、ジャッキー・バイアードがリーダーのアルバムからの選曲なのですが、一瞬、ベン・ウェブスターとアート・テイタムのバージョンを思い浮かべ、ニヤリとするような演奏内容でした。
カークとバイアードの共通点
ピアニストのバイアードがリーダーとはいえ、サイドマンとして参加しているカークのほうにも耳が吸い寄せられてしまいます。
この2人に共通しているキーワードは、「温故知新」、そして「人間百科事典」。
古いスタイルから、当時最新鋭の過激なスタイルまで縦横無尽に、なんの矛盾もなく行き来できる柔軟性。これがあったからこそ、2人の波長はピッタリと合うのでしょう。
これがこの2人の表現スタイルの面白いところでもあり、だからこそ退屈することなく楽しめるのでしょう。
そういえば、このミンガス・グループの一員だったことも、この2人の共通点ですね。
正直、私、このアルバム聴くの初めてだったんだけど、ウェブスター、テイタム風の最初はニヤリ、じわじわと彼らの本領が発揮され、少しずつエッジの立った音に変貌してゆく後半に身を乗り出していました。
まるで、タイムマシンの窓から外を眺めているように、昔懐かしの風景が、いっきに現在・近未来の風景へと移り変わってゆく情景を見ているようでした。
うーん、なんでも出来ちゃう彼らはズルい、そしてウマい。
イヤミを感じさせずに、なんでも出来るっていいねぇ、と思わせてくれる演奏でした。
ローランド・カークも楽しめ、なおかつリーダーのバイアードのピアノも楽しめる。
さらに、この2人の相性の良い個性が溶け合い、ユニークなサウンドに昇華されているため、アンサンブルとしても楽しむことが出来る。
さっそく、午後から、サウンズパルに買いに行かなくては。
あ、そうそう、今、コレ、奄美大島のホテルで書いているのです。
記:2006/10/09
album data
THE JAKI BYRD EXPERIENCE (Prestige)
- Jaki Byard
1.Parisian Thoroughfare
2.Hazy Eye
3.Shine On Me
4.Evidence
5.Memories Of You
6.Teach Me Tonight
Jaki Byard (p)
Roland Kirk (ts,cl,Manzello,Whistle,Other)
Richard Davis (b)
Alan Dawson (ds)
1968/09/17