クッキン/マイルス・デイヴィス
ピリッとマイファニー
ピリッと締まった《マイ・ファニー・バレンタイン》が良い。
特に、イントロのピアノが良い。
レッド・ガーランドのピアノだ。
《ブルース・バイ・ファイブ》のイントロのブロックコードの響きが美しく、それでいてガツン!とした迫力もある。
ピアノはレッド・ガーランドだ。
もちろんチェンバースのグイグイと引っ張るベースも良いし、フィリー・ジョー・ジョーンズの荒っぽいけど迫力のあるドラムも興奮モノだ。
コルトレーンも良い意味での演奏の推進&起爆剤。
ようするに、メンバー全員のプレイが素晴らしい。
しかし、資質の違うこれら4人のツワモノを纏め上げてしまうマイルスが、結局のところ一番スゴイ、のだろう。
甲乙のつけ難いプレスティッジの「in'」シリーズ4部作。
強いていえば、一番ピリッとした締まりが感じられる本作が、私は好きだ。
記:2002/02/24
マラソンセッション
史上名高い1956年のマラソン・セッションで吹き込まれたマイルス4部作中の1枚が『クッキン』だ。
マラソンセッションとは?
マイルス・デイヴィスが大手レコード会社CBSと契約してしまったため、契約中だったプレスティッジとの残りのアルバム制作枚数を消化するために行ったレコーディングが、「マラソンセッション」と呼ばれている。
なにせ、アルバム4枚分の曲を、録り直し無しで、2日間で録音してしまったのだから。マラソンセッションというよりは“一気セッション”と呼んだほうがいいかもね。
『クッキン』は、この一気に録音された4枚の中の1枚。もう1枚の『リラクシン』と人気を二分する本作だが、人気の大きな理由は冒頭の《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》のクールかつスイートな演奏によるところが大きい。
ブルース・バイ・ファイブ
《マイ・ファニー~》の素晴らしさは、多くの人が、様々なところで語っているので、今回はあえて、あまり注目されない2曲目にスポットを当てて書こうと思う。
《ブルース・バイ・ファイブ》という曲だ。
タイトル通り、ブルースです。
冒頭から、ピアノのレッド・ガーランドが、得意のブロック・コードでガンガン攻めてくる。聴いた瞬間、ガーランドと分かる綺麗な和音でありながら、迫力があってカッコいい。
ガーランドに続いて、登場するマイルスのトランペットも、そして、野太いサウンドで迫ってくるコルトレーンのテナーも大迫力。特にトレーンのソロは熱に浮かされているような感じがしますね。
続いて登場するガーランドのピアノソロ。
これが絶品だ。
高音部のきらびやかさ、転がるようなスイング感。ハードなリズムに乗ってスマートに舞うピアノだ。
彼のリーダー作『グルーヴィ』のラストナンバー《ヘイ・ナウ》テーマのフレーズが顔を出すが、まぁそれはご愛嬌ということで。このフレーズは、彼お得意のクリシェなのかもしれない。
とかく、1曲目の「マイ・ファニー・バレンタイン」で語られることの多いアルバムではあるが、是非『クッキン』の2曲目にも耳を傾けてみて欲しい。
さらに、『クッキン』というアルバムが気に入ったら、是非、残りの3枚にも耳を通してみよう。
『リラクシン』、『ワーキン』(『ウォーキン』じゃないからね)、『スティーミン』の3枚です。
記:2009/10/19
album data
COOKIN' (Prestige)
- Miles Davis
1.My Funny Valentine
2.Blues By Five
3.Airegin
4.Tune UP/When Lights Are Low
Miles Davis(tp)
John Coltrane(ts)
Red Garland(p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones(ds)
1956/10/26
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