ダウン・ホーム/ズート・シムズ

   

テンポに注目

普通、アルバムの中には、一曲ぐらいはバラードのようなスロー・テンポの曲が入っていて、全体の流れにメリハリがつけられているものだ。

しかし、この『ダウン・ホーム』に入っている曲は、バラードやアップテンポのナンバーなし。
ほとんどが同じテンポの曲ばかりなのだ。

ミディアムよりも、ちょい速めのテンポの演奏が目白押し。

しかし、肩のほぐれたリズム・セクションの好サポートと、のびのびと闊達なプレイをしているズートのテナーを聴くと、別に同じテンポの曲ばかりでも、楽しく聴ければそれでいいじゃないか、と思う。

飽きない、ひたすら心地よい

《ジャイヴ・アット・ファイヴ》、《ドッギン・アラウンド》など、カウント・ベイシー楽団のレパートリーを筆頭に、スウィング時代以前の古いナンバーを中心に選曲されているが、ビ・バップの曲をあまりやりたがらないというズート・シムズ、きっと、このような古い時代のナンバーが自家篭中のものとしているのだろう、ひたすらスイングしまくる演奏が心地よい。

自分の得意なレパートリーだけをひたすらスイングさせようという意気込みには、潔さすら感じる。

だから、単調さは感じないし、間違っても飽きることはない。

暖かく、丸みのあるトーンと、レスター・ヤングを彷彿とさせる、スムースに流れるようなアドリブのメロディ。

派手なフレーズは飛び出さないが、安定した堅実なメロディが丁寧に構築されてゆく。

やんちゃで元気なダニー・リッチモンドのドラム、そして黒く屋台骨を支えるジョージ・タッカーのベースも最高。

ひたすらリラックスした気分で最後まで楽しめる好アルバムだ。

記:2002/04/13

album data

DOWN HOME (Bethlehem)
- Zoot Sims

1.Jive At Five
2.Doggin' Around
3.Avalon
4.I Cared For You
5.Bill Bailey
6.Goodnight, Sweetheart
7.I Cared For You
8.There'll Be Some Changes Made
9.I've Heard That Blues Before

Zoot Sims(ts)
Dave McKenna (p)
George Tucker (b)
Dannie Richmond (ds)

1960/07/07

 - ジャズ