ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー/アート・ペッパー

   

シャバダ・シャバダ・娑婆だ!

ペッパー・リターンズ!

ペッパーが還ってきた!

どこから?

刑務所から(笑)。

彼は、麻薬で捕まり、2年間、服役していたのですね。

そんなペッパーの刑務所復帰作がコレ。
『ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー』なのです。

「乾」と「濡」

軽やかなウエスとコーストのリズムセクションに乗り、快調にアルトを吹くペッパーだが、カラッとしたリズムセクションに対して、ペッパーのサックスは、どこかウェットに濡れている。

この「乾」と「濡」のブレンド具合がとても気持ちが良い。

さらり・ほろり ペッパーテイスト

やっぱり、シャバに戻れて嬉しかったのでそうね、1曲目の《ペッパー・リターンズ》がサクサクと快調。

ジャック・シェルドンとの掛け合いも見事だ。

ジャック・シェルドンのトランペットって、破綻が無さ過ぎて却って目立たないが、よく聴くと、かなりのテクニシャンではあります。

全体的にサラリと演奏が流れてゆくが、丁寧にダシをとった薄味の上品なお吸い物のような味わい、喉越しなので、よく聴かないと美味しいところを聞き逃す可能性アリ。

ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド

私は、かなり大甘なメロディを持つ《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》を、ジャズマンの美学を測る一つのバロメーター曲としている。

つまり、普通に演奏すると、かなりクサい内容になってしまうこの曲をどう料理するかが、ジャズマンの個性やセンスを測る一つの物差しになるのだ。

その点、アート・ペッパーのサラリと吹いて、ホロりと叙情的な吹奏は、「うまい!まいった!」だ。

《マンボ・デ・ラ・ピンタ》のように賑やかで楽しいリズムの曲もあるが、やっぱり、このアルバムは、《ペッパー・リターンズ》で浮き浮き気分、《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》で、少々優雅にセンチメンタル気分……、なんじゃないでしょうか?!

サラリとした肌触りに、ホロリとした情感。

この絶妙なニュアンスはペッパーにしか出せない!

そして、このペッパーならではの「味わい」を堪能できる名盤なのです。

記:2002/04/12

album data

The Return Of Art Pepper (Aladin→Blue Note)
- Art Pepper

1.Pepper Returns
2.Broadway
3.You Go To My Head
4.Angel Wings
5.Funny Blues
6.Five More
7.Minority
8.Patricia
9.Mambo De La Pinta
10.Walkin' Out Blues
11.Pepper Steak
12.You're Driving Me Crazy
13.Tenor Blooz
14.Yardbird Suite
15.Straight Life

#1-10
Art Pepper (as)
Jack Sheldon (p)
Russ Freeman (tp)
Leroy Vinnegar (b)
Shelly Manne (ds)
1956/08月

#11-15
Art Pepper (as)
Red Norvo (vib)
Gerald Wiggins (p)
Ben Tucker (b)
Joe Morello (ds)
1957/01/03

 - ジャズ