マック・ザ・ナイフ~エラ・イン・ベルリン/エラ・フィッツジェラルド
楽しくて深い
「出産のときに重宝した一枚」と、うちの女房のお墨付きのアルバムだ。
『エラ・イン・ベルリン』。
エラ・フィッツジェラルドのノリにノッたライブアルバムだ。
彼女の明るくパワフルな歌声は、お腹の中の子にも悪い影響を与えるはずはないし、なにより自分自身が本当に元気になるから。
そんなことを呟きながら、病院の先生から「入院の際には、元気になるCDを何枚か持ってきてください」と言われた女房は、このCDをカバンの中に詰め込んでいた。
エラ・フィッツジェラルドは、分類的にはジャズのヴォーカリスト。
しかし、場末の酒場で、気怠くムーディに…。といったイメージとは対極の歌手だと思う。
サラ・ヴォーンには薄暗くムーディなクラブが似合うが、エラには広くて明るいホールが似合う。
そして、もう、ジャズとか歌謡曲とかロックとか、そういったジャンルの垣根を飛び越えて、真に表現力のある歌手だと私は思っているのだが……。
彼女の歌は、抜群にうまく、そして、楽しい。
とくに「ウディウディ・シャバダバ」のスキャットはもう「最高!」としか言いようが ない。 楽しくエキサイティングな内容のこのアルバム、多くの人が、彼女の歌から元気を 分けてもらっているんじゃないかと思う。
しかも有名曲が目白押し。
歌い方も、原曲のメロディをあまり崩していないので、初心者にも楽しめる上に、ベテランが聴いても聴きどころの多い内容だと思う。
特にオススメは、やはりラストの2曲。
《マック・ザ・ナイフ》と《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》だ。
親しみやすいメロディに乗って、1コーラスごとに音階を上昇させ、即興の歌詞を織りまぜながら、楽しげに歌われてゆく《マック・ザ・ナイフ》。
ルイ・アームストロングを真似て、ダミ声っぽく「デュビ・デュビ・ダバダ…」とスキャットする箇所もあり、楽しい。
《マック・ザ・ナイフ》を歌い終わったら、短いMCを挟んで《ハウ・ハイ・ザ・ ムーン》に突入。とにかくスキャットの凄いこと凄いこと。
圧巻!まさに、歌があふれ出てくる!と言わんばかりの歌唱には、誰もが舌を巻くことだろう。
いつ聴いても楽しめ、かつ深い内容の1枚だと思う。
記:2002/08/21
album data
MACK THE KNIFE - ELLA IN BERLIN (Verve)
- Ella Fitzgerald
1.Gone With The Wind
2.Misty
3.The Lady Is A Tramp
4.The Man I Love
5.Summertime
6.Too Darn Hot
7.Lorelei
8.Mack The Kinfe
9.How High The Moon
Ella Fitzgerald (vo)
Paul Smith (p)
Jim Hall (g)
Wilfred Middlebrooks (b)
Gus Johnson (ds)
1960/02/13