皇帝ペンギン(日本語吹き替え版)/鑑賞記

   

penguin

子どもにも見せたかったので、『皇帝ペンギン』の映画は、日本語吹き替え版のほうを選択した。

というより、近所の映画館でやっていたのが、日本語バージョンだけだったような。

ナレーションの吹き替えが、石田ひかり、大沢たかお、神木隆之介のバージョンですね。

ペンギンの可愛さ、ユーモラスさは、例に漏れず、私自身、たっぷり味わったし(観に行った目的の半分は、まさに愛くるしいペンギンを見たい!だから)、おそらく多くの人も同じ感想をお持ちだろうから、同じことばかり書いても仕方がない。

今回の感想は、別のアプローチから書いてみよう。

まず、皇帝ペンギンの生態プログラムって、非常に非効率、かつ不自由だと思った。

以下、私がこの映画を観て、なんとも非効率&不自由だなと思った点を挙げてみる。

母親が生んだ卵を父親が温めるのだが、少しでも受け渡しをしくじると、すぐに卵は凍り付いて死んでしまう。

卵を暖めている間、父親は120日絶食する。

父親が卵を温めている間、腹をすかせた母親は20日もかけて南極大陸を行進し、海へ行く。

(20日かけて)餌を取りに行った母親が戻ってこないと、雛は死んでしまう。

その母親が餌で腹を満たして戻ってくるのも、雛は餓死寸前、父親も体力の限界に近いタイミング。

母親と子育てを交代した父親は、120日の絶食後、20日かけて海に餌を求めに旅立つ(このときに死ぬペンギンが多い)

まだまだ、枚挙に暇がないが、過酷な環境下で生きる彼らの行動は、つねに生きるか死ぬかのギリギリのタイミングで営まれていることに気づく。

皇帝ペンギンたちは、産卵に絶対安全な場所を選んで集結するわけだが、上記の箇条書きを読んでいただければ分かるとおり、彼らの餌場となる海からは、遥か離れた場所を選んでいるところが興味深い。

近くに海のある場所で産卵、卵温めをすれば、100日以上も絶食したり、20日もかけて食事をしに行ったりする必要もないのに…、と考えるのが、まぁ、まっとうな“人間”の発想ではある。

逆に効率的だと思った点もある。

ブリザードが吹きすさぶと、互いに身を寄せ合い暖めあう。

外側と内側のペンギンは定期的に交代する。

天敵のカモメが襲い掛かってきたら、陣を作り、容易に攻撃を出来ないようにする。

などなど、防寒や防御に関しては、動物の中でも縄張り意識の極めて低い種だけあって、互いが強力しあう連携プレイが得意だ。

私は、さきほどから、「効率・非効率」という言葉を使っているが、この「効率・非効率」というのは、あくまで、温帯モンスーンの恵まれた気候と、日本という恵まれた環境で何不自由なく、毎日を命をかけることもなく謳歌している私という人間から見た発想だ。

マイナス40度の極寒の地・南極においては、私が感じる「非効率な営み」も、じつは、“強い者だけが生き残る・強くないと生き残れない”という非常に厳しい適者生存のための試練なのだ。

弱い者は生き残れない。

弱い者は次代に遺伝子を残させない。

そのための試練を、あえて皇帝ペンギンは作り、選択し、実行しているかのようにもみえる。脱落者を淘汰するために。

人間の場合の試練というのは、せいぜい成人の儀式ぐらいか。

それも、肉体的な強さを試す試練を行うのは、今や、アフリカやオーストラリアの一部の部族だけなんじゃないかな。バンジージャンプとか、ライオン狩りとか、ね。

日本の成人式なんて、試練どころか、日本酒ラッパ呑みのバカガキたちに荒らされる「場」に堕しているよな。

試され、試練を受けるのは、むしろイイ年した大人だったりする。

皇帝ペンギンの生命プログラムからしてみると、試練を受けず、かつ試練に耐えずに大人になる者は、いや、大人になることすら拒否するようなヤカラは、次の世代に遺伝子を残す資格すらなく、「種の維持にとって迷惑な存在、ゆえに、いらんから死ね」ってことになるんだろうね。

ま、そういうヌルい甘ったれは、南極のような過酷な環境では生き残れるわけもないんだろうけど。

可愛い顔して、彼らは生きるために、常に闘っているのだ。

ヌルい大人な我々が、ルックスだけみて、かわいい~、だなんて言ってられないのかもしれない。

とはいえ、やっぱり飛行帽をかぶったようなルックスのヒナは、滅茶苦茶可愛いけれどね。(←やっぱり、そこに落ち着くか)

観た日:2005/07/29

movie data

皇帝ペンギン~日本語吹き替え版~
監督:リュック・ジャケ
製作:イヴ・ダロンド、クリストフ・リウー、エマニュエル・プリウー
撮影:ロラン・シャレ、ジェローム・メゾン
脚本:イヴ・ダロンド、クリストフ・リウー、エマニュエル・プリウー
声の出演:ロマーヌ・ボーランジェ、シャルル・ベルリング、ジュール・シトリュク
(日本語吹き替え版)石田ひかり、大沢たかお、神木隆之介
2005年作品
フランス

記:2005/08/04

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