ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー・トリオ Vol.2
長尺ブルースが冗長に感じた理由
同じウェス・モンゴメリーのライブ盤でも、『ハーフノート』よりも『フル・ハウス』のほうに、ついつい手が伸びてしまうのは、ジャズのおいしいエッセンスが「ぎゅっ!」と凝縮された『フルハウス』に比べると、『ハーフノート』のほうが、いささか冗長なイメージがあるからかもしれない。
もっとも、私が感じる「いささか冗長」というのは、『vol.1』の冒頭で奏でられる《ノー・ブルース》のイメージが強いからというだけのこと。
肩慣らし、指慣らしのジャムセッション的な演奏で、その場に居合わせた人にとっては楽しい演奏だったに違いないが、ほかにもたくさんウエスの演奏を聴いている身としては、ちょっと長めかなぁ、と感じてしまうのだ。
もちろん、長いからといって演奏のクオリティが低いというわけではまったくない。
そして、それ以外の演奏は、すこぶる良し!
なので、冒頭では『フルハウス』>『ハーフノート』的な書き方をしてしまったが、『ハーフノートのウェスとケリー』だって、ライヴアルバムとしては特上級に素晴らしい内容なのだ。
『フル・ハウス』のリズムセクション
『フル・ハウス』も『ハーフ・ノート』も参加ジャズマンはほぼ一緒だ。
というよりも、『フル・ハウス』のメンバーから、テナーサックスのジョニー・グリフィンが抜けたら『ハーフノート』のメンバーになる。
よって、リズムセクションは変わることなく、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)の3人だ。
マイルスのリズムセクションを担った名手である彼らのこと、リズムの跳ね、ノリは同質なものだが、レーベル変われば音も変わるのか(リヴァーサイド⇒ヴァーヴ)、同じメンバー、リズムセクションであっても、受けるイメージはずいぶんと異なる。
一言でいえば、『ハーフノート』のほうが開放的、かつメジャー感が漂っている。
したがって聴きやすく親しみやすい演奏ばかりで、特にバラード系の演奏が素晴らしい。
しっとりとメロディを聴かせるウェスのギターは、特に難しい節回しにこねくり回さなくとも、ストレートにメロディを「あの音色」で奏でてくれれば「もうそれでOK!」という気分になってしまう。
この『vol.2』だと《飾りの付いた四輪馬車》や《オー・ユー・クレイジー・ムーン》が個人的には好きかな。
あと、エロール・ガーナーの《ミスティ》もいいよね。
曲の「髄」を巧みに引き出した良い演奏だ。
同時に、ウエスの音色とフレージングと曲そのものが持つ雰囲気が、絶妙にブレンドされて、とても良いムード。
私の場合、ウェスがメロディを慈しんでギターの弦を親指でこすった音を聴きたい時に手が伸びることが多いようだ。
『夢のカリフォルニア』や『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』も、基本、ウェスは「あの音色」でメロディを奏でるだけではあるのだが、やはり「ジャズ的濃度」が全然違うからね。
それにしてもケリーのピアノは、相も変わらずセンスの良い軽妙洒脱なバッキングだなぁ。
ちなみに、最近発売されているCDの赤盤(vol.2)の収録曲は、青盤(vol.1)に収録されている曲も一緒に収められているんだけど、以下の収録曲の表記はオリジナルのものに則りました。
記:2011/04/27
album data
SMOKIN' AT THE HALF Note VOL.2 (Verve)
- Wes Montgomery & Wynton Kelly
1.The Surrey With The Fringe on Top
2.Oh, You Crazy Moon
3.Four On Six
4.Misty
Wes Montgomery (g)
Wynton Kelly (p)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (ds)
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