ジャズ・クラシック・アルバムズ

2012/08/31

セットものベストもの

ジャズに興味を持ち始めて以来、私の場合は関心を持ったジャズマンに関しては、アルバム単位で買っては聴き、少しずつコレクションをしていった。

マイルス・デイヴィスに関してはオフィシャルにレコーディングされた主要音源はほぼ揃えつつも、少しずつブートレッグにも手を出してみたりもしたし、セロニアス・モンク、バド・パウエル、エリック・ドルフィーなどは、リーダー作のみならずサイドメンとして参加した別のジャズマンがリーダーのアルバムなども、調べてはこつこつ揃えていくのが楽しみのひとつだった。

演奏の特徴を掴んでしまうと、同じような曲目や演奏内容のアルバムにもぶちあたることもあるが、アルバム単位で接すれば、アルバムごとにそれぞれ固有のカラーがあり、そのテイストの違いを味わうのも楽しみの一つでもあった。

ところが、最近のリスナーは、アルバム単位で１枚１枚購入するよりも、セットものやベストものを買う傾向があるようだ。

音はそこそこ入門者におすすめ！

たしかに、アルバム１枚ごとに購入することは、お金と時間がかかる。ＣＤの爆発的な廉価傾向の今日であったとしても。

であれば、各ミュージシャンの主要アルバムを一気に購入してしまい、あとは空いた時間を利用して少しずつ耳を通していこうという傾向になるのかもしれず、また、そのような消費傾向に拍車をかけているのが、廉価なボックスセットが大量に発売されているという背景もあるのだろう。

特にReal Gone Jazzから膨大な点数が発売されつづけている『エイト・クラシック・アルバムズ』や『シックス・クラシック・アルバムズ』と名打ったシリーズは、数セット購入してみたが、たしかに安いし買った瞬間、トクした気分になる。

その一方で、
まとめて買った
⇒いつでも聴ける

という安心感に包まれ、結局、ボックスの封を積極的に解かなくなるという弊害もある。

もっともそれは私だけなのかもしれないが。

しかし、この1000円前後、場合によっては1000円を切る価格設定の魅力には抗いがたいものがあることもたしかで、たとえば８枚中持っていないアルバムが１枚か２枚あったとすると、残りのアルバムを所有していても、ついつい安さに負けて購入してしまうこともあるほど。

音質はそこそこ。
悪くはないが、良いとはいえない。

かなり薄っぺらな音質の音源もある。

しかし、安さゆえ、そのあたりは目をつぶれる範囲だ。どうせ私の場合は、すべてiPodに音を取り込んで持ち歩きながら聴くことのほうが多いのだから。

仮に、気になるミュージシャンが出現して、その人のアルバムを１枚も持っていない場合、１枚のアルバムを買って「当たった」「ハズれた」と判断を下してしまうよりも（たまたまハズれアルバムを引いてしまっただけなのかもしれない）、一度に数枚のアルバムを廉価で購入し、俯瞰するかたちで、一気に通し聴きをしたほうが、そのミュージシャンに対する評価は少なくとも嫌いになる確率はグッと減るかもしれない。

そういうい意味では、この『classic albums』シリーズは、アルバム１枚に対する愛着度は生まれにくいかもしれないが、ミュージシャンの業績を一気に体感できるという面では非常におトクなシリーズなのかもしれない。

もっとも、過去にせっせとアルバム単位で買い揃えていた立場からすると、これから聴く人は、ラクでトクだよなぁと思わずにもいられないが。