真夏の夜のロバート・ジョンソン《心やさしい女のブルーズ》

   

真夏の夜って切ないと思いません?

とくに、日中が暑ければ暑いほど。

もちろん、クーラーなどかけずに、窓を開けて、一人、夜中の2時とか3時に、なにもせずに、じーっとしていると。

夏の暑さは、あらゆるものごと、生命のスピードに加速がかかり、めまぐるしいほど、空気の流れ、温度の上昇、意識の変化などの速度がぐるぐるとめまいがするほど加速がかかってゆくことを感じるのだけれども、夜中に一人で過ごす、微妙に涼しい空間と時間というのは、日中のスピードが微妙にスピードダウンし、いまだスピードに追いつき追い越そうとする意識に微妙な揺さぶりをかけて来、この速度の“シンクロしなさ具合”が吐き気を催すほど、ダルい違和感があるのだけれども、それを我慢しているうちに、ピタリと空気と意識の速度が一致する瞬間がやってくる。1時間後かもしれないし、明け方近くの時間かもしれない。

そのときのピタリと一致!した瞬間って、かなり切ない気分になる。

かといって、切なくなったからといって、何をどうするというわけでもなく、再び夜が明け、ぎらぎらとした太陽が昇れば、また私の肉体と意識には加速装置がかかり、ほっとなトーキョー空間をぐるぐると駆け巡るだけ。

そんな真夜中に、ロバート・ジョンソンの《心やさしい女のブルーズ》を聴きたくるのですが、時間が真夜中だと、「聴いちゃダメだ、聴いちゃダメだ、聴いちゃダメだ!」と、心のどこかがストップをかけるのです。

悪魔に魂を売ったと言われる男が奏でるブルースを、切ない気分で真夜中に聴いてしまったら、本当にどこかに連れていかれてしまいそうになるから。

記:2007/08/04

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