キン肉マンというノスタルジー
2018/08/27
text:山彦
キン肉マン
諸君、『キン肉マン』をご存じだろうか。
現在連載されているマンガに対して「ご存じだろうか」は失礼かもしれないが。
しかし私にとっては――
いや多くの「元少年」にとってはそうではない。
『キン肉マン』はいちど「過去」になった。
カニベース
まあ「過去」というのは言い過ぎかもしれない。
ではこう言い直そう。
「完結した」のだ。
しかし、それが二度くつがえされた。
一度目は『キン肉マン二世』によって。
二度目は『キン肉マン』の再開によって。
もちろん嬉しい。
私は『キン肉マン』のファンだ。マンガも全巻集めたし、その後に出た『超人大全』も買って超人強度まで憶えた。
「知ってるか? カニベースの超人強度は2なんだぜ?」
それがいつしか私の口癖になっていた。
「2」という数字がいかに凄まじい数字か、一部の方にはお分かりいただけないかもしれない。
カニベースの次いで超人強度の高い超人はルピンで、彼は1万パワーある。
「万」だ、「万」がつく。
カニベースは以外はみんな万単位だ。カニベースだけ「2」。
カニだからと言ってそれでいいのか。
話を戻そう。
正直、「完結」していただきたかった。
しかしこれはマンガのせいではない。私の個人的な経験による。
『キン肉マン』が完結してから数年が経ったころ、しかし私はその「完結」を受け入れられず、まだ現役のつもりでいた。そう、いつまでも引退しないプロレスラーのように。
ある若い女性と初めて顔を合わせた際、私はこう自己紹介した。
「山彦(仮名)です。好きな超人はロビンマスクです」
本当は悪魔将軍が好きなのに、女の子の前だからとカッコつけてしまった。
問題はしかしそこではない。
彼女は「超人」と言われてもニーチェしか分からない世代なのだ。平成生まれだった。
彼女は言った。
「ロビンマスクってなんですか?」
私はひどく赤面した。
以来、私の中で『キン肉マン』は完結した。
ほろ苦い記憶とともに。
あと二世は無闇にグロくて途中で読むのをやめた。
記:2014/10/14
text by
●山彦
自称小説家。実際はプログラマ。
おもに自宅を警備中。
『キン肉マン』が好きです。
牛丼も好きです。
90年代の亡霊。
自称小説家。実際はプログラマ。
おもに自宅を警備中。
『キン肉マン』が好きです。
牛丼も好きです。
90年代の亡霊。