カフェ・モンマルトル

高野雲の雑記帳。音楽・映画・読書・模型。

織田信長を演じた俳優たち、いろいろ

      2022/06/12

織田信長は、武田信玄とともに私が好きな戦国大名の一人だが、映画、ドラマごとにまったくイメージが異なる。

いったい誰が本当の信長に近いのかは、実際の当人が生きていない以上比較のしようもなく、それぞれの物語ごとに、描かれる信長像はかなり違うし、俳優のタイプも千差万別だ。

とはいえ、それぞれの作品ではどういう解釈、目線で描かれているのかに関しては興味があるので、これまで観てきたドラマ、映画から私が感じたそれぞれの役者の信長の感想を箇条書きに書いてみる。

石橋凌 武田信玄

1988年放映の大河ドラマ『武田信玄』に登場する信長を演じるのは、ロックバンドARBの元ヴォーカルの石橋凌。

元暴走族の頭上がりのような荒くれ・破天荒なイメージが、重く静かな迫力を放つ中井貴一演じる武田晴信と良い対比をなしており、「新興勢力」感を出してはいた。

渡辺謙 織田信長

1989年放映の民放大型時代劇スペシャル『織田信長』に登場する信長を演じるのは、渡辺謙。

渡辺謙が演じる織田信長よりも、真田広之が徳川家康を演じていることに仰け反った。

緒形直人 信長 KING OF ZIPANGU

1992年放映の大河ドラマ『信長 KING OF ZIPANGU』の主人公・信長を演じるのは緒形直人。

なぜか不仲だったはずのお母さんにべったりだったというイメージが強い。
また、架空の占い師(祈祷師?)加納随天を常に傍らに置いていたことにも違和感があった。

渡哲也 秀吉

1996年放映の大河ドラマ『秀吉』で織田信長を演じていたのは渡哲也。
おそらく多くの日本人が思い描く信長像の最大公約数のイメージが、この「渡信長」なのではないだろうか。
厳しくも優しい一面もあるヤクザの親分的なイメージ。
竹中直人の秀吉と良い対比をなしていたと思う。

木村拓哉 織田信長 天下を取ったバカ

1998年放映の民放スペシャルドラマ『織田信長 天下を取ったバカ』の信長役は、キムタクだった。
キムタクは、何を演じてもキムタクだという好例。

反町隆史 利家とまつ~加賀百万石物語~

2002年放映の大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語~』で信長を演じていたのは反町隆史だった。
反町演じる信長は、けっこう人気だったような記憶が。

しかし、個人的には「~であるか」が口ぐせの「イケメン・カリスマ親分」というイメージしか記憶にない。

舘ひろし 功名が辻

2006年放映の大河ドラマ『功名が辻』に登場する信長は、舘ひろしだった。

いつも赤と黒の和服を着ていた派手はオジサンというイメージ以外あまり印象に残ってないなぁ。

佐久間二郎 風林火山

2007年放映の大河ドラマ『風林火山』に登場する信長は、佐久間二郎だった。

三宝寺所蔵の肖像にそっくり。
それくらいの印象しか残っていない。

吉川晃司 天地人

2009年放映の大河ドラマ『天地人』に登場する信長は、吉川晃司が演じていた。

ダークで陰険で近寄りがたいなイメージ。
女忍者(長澤まさみ)を重用しすぎていた感あり。
まあそうでもしなければ、直江兼続とのつながりを描けないからね。

豊川悦司 江~姫たちの戦国~

2011年放映の大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』では、豊川悦司が信長を演じていた。
超戦国時代を体現したアーティストのようなイメージ。

この「トヨエツ信長」は、優しく人並外れたアーティスティックなオジさんという造形は、幼かった主人公・江に映った「カッコいいオジさん像」を誇張して描いたものなのかもしれない。
ありえない信長像ではあるけれども、個人的には、好感。

篠井英介 清須会議

2013年に劇場公開された映画『清須会議』(監督:三谷幸喜)の信長は、篠井英介が演じていた。

信長死後のエピソードなので、回想シーンに少ししか登場していないが、案外、このような高貴なイメージの信長のほうが「ヤンキー信長」や「若組長信長」なイメージよりも現実的なのかもしれない。

江口洋介 軍師官兵衛

2014年放映の大河ドラマ『軍師官兵衛』の信長は、江口洋介が演じていた。
またまたイケメン信長かと最初は思ったものの、意外に違和感なく、物語のピースを過不足なく埋めていた印象。

小栗旬 信長協奏曲

2014年放映の民放ドラマ(後に映画化もされた)『信長協奏曲』では、信長になってしまった(させられてしまった)現代の高校生を小栗旬が演じている。

みんな仲良し、誰にでも「ちゃん」付け。
ディズニー戦国ランドの小学生メンタルな信長だった。

市川海老蔵 おんな城主 直虎

2017年放映の大河ドラマ『おんな城主 直虎』で信長を演じていたのは、市川海老蔵。

タダモノではない異様な存在感を醸し出していたが、とてもかつての小国・尾張出身の大名とは思えぬ、よくも悪くも大仰な立ち居振る舞いだった。

染谷将太 麒麟がくる

2020年放映の大河ドラマ『麒麟がくる』では、染谷将太が信長を演じていた。

染谷将太の信長は、最後の最後まで、どうしても信長には見えず、このパステル調に彩られた戦国時代作品『麒麟がくる』は、よその星でおきた、我が国の戦国時代とよく似たエピソードにしか見えなかった。

「父親に褒められたい」「人に褒められたい」という承認欲求の塊のような小人が、明智光秀にそそのかされて大志を抱き、自らの器では御しえぬ権力を手中にしてしまったがゆえ増長し、滅びていったという物語の骨格には相応しいキャラクター造形であったとは思うが。

安土往還記 辻邦生

では、お前は一体、どの作品に登場する信長がもっとも信長らしいと思うのか?!と問われると、困ったことに「いない」のです。

以前、「織田信長・佐野史郎説」を書いたことがあるが、

>>織田信長、佐野史郎(冬彦さん)説

その佐野史郎とて、私の中で(勝手に)思い描いている信長像とは少し違う。

残念ながら、私が脳内で思い描く信長は、小説の中の信長なんだよね。

山岡荘八の『織田信長』の信長は、濃姫との「夫婦漫才」的な信長ではあるんだけれども、そこで描き出される頭脳と行動力のスピード感のある武将という原初のイメージは、この小説で形作られたといっても良い。

ただ、後になって様々な作品を読むうちに、山岡荘八の信長像は、いささか漫画チックだとも思いはじめ、津本陽の『下天は夢か』や、辻邦生の『安土往還記』の信長像が、案外、実際の信長はこういう人物だったのではないかと思うようになった。

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追記

最近だと、今村翔吾の『じんかん』に登場する梟雄・松永久秀に得も言われぬシンパシーを抱く「上様(織田信長)」も、面白い人物造形だと感じている。

 - ジャズ